ケアマネジャーに相談することになっても、何から話せばよいのか迷うことがあります。親の様子を説明するだけで時間が過ぎ、帰ってから「自分が眠れていないことも伝えればよかった」と気づくかもしれません。
相談では本人の生活だけでなく、支えている家族の状況も伝えてよいのです。
「仕事を休み続けるのは難しい」
「夜の対応で疲れている」
そういったことも、これからの支援を考えるための情報になります。うまく説明しようと構えすぎる必要はありません。まずは今いちばん困っていることを一つ伝えるところから始めてみてください。
そこでこの記事では、在宅で暮らす親の介護を中心に相談できることと、面談前に整理しておくと役立つことを紹介します。
ケアマネジャーには暮らしの困りごとを相談
ケアマネジャーは本人の心身の状態、生活環境、本人や家族の希望を踏まえてケアプランを作り、サービス事業所との連絡・調整を行う専門職です。ケアプランとはどのような生活を目指し、そのためにどのような支援を利用するかをまとめた計画です。
介護支援専門員とは、要介護者や要支援者の人の相談や心身の状況に応じるとともに、サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるようにケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成や市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行う者とされています。
「デイサービスを週に何回使えますか」という質問に限らず、「昼間、親が一人で過ごすことが心配です」といった生活の悩みから相談できます。サービス名を先に決めておく必要はありません。
例えば、次のようなことです。
| 困っていること | 相談の入口となる伝え方の例 |
|---|---|
| 入浴の介助が難しいです | 家のお風呂で立ち上がるときに支えが必要になり、家族だけで介助するのが不安です |
| 家の中の移動が心配です | 廊下の段差でつまずくようになりました。手すりや福祉用具について相談したいです |
| 夜の対応で休めません | 夜中のトイレの付き添いが続き、家族の睡眠が足りていません |
| 仕事と介護の両立が難しいです | 平日の日中は仕事で対応できません。今の支援を見直したいです |
| 費用が気になります | 毎月負担できる金額に限りがあります。利用料の見込みや、利用できる軽減制度を確認したいです |
| 親がサービスを嫌がります | 本人は「知らない人のところへ行きたくない」と話しています。どう進めるか一緒に考えたいです |
医療や金銭管理の問題も、生活に関わる困りごととして伝えられます。ただし、診断や薬の変更は医師などの医療職、法的な判断や手続きはそれぞれの専門家・窓口が担います。ケアマネジャーには必要な相談先につながるための支援も相談できます。
「相談できること」と「直接代わりにしてもらえること」は、分けて確認しておきましょう。通院の付き添い、買い物、金銭管理などを、ケアマネジャー本人にすべて任せられるわけではありません。

担当者がまだいない場合は、地域包括支援センターへ
介護保険の申請前やどこへ相談すればよいか分からない段階では、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談できます。
要介護1〜5で在宅のサービスを利用する場合は、通常、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当します。
要支援1・2の介護予防支援は地域包括支援センターなどが担い、2024年4月からは市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所も直接担当できるようになりました。利用するサービスによって扱いが異なるため、最初の窓口で確認すると安心です。
介護保険のケアプラン作成については、2026年10月現在では利用者の自己負担はありませんが、住宅型有料老人ホーム等の入居者を対象に原則1割の利用者負担を導入する方向で検討が進められています。

面談前のメモは、まず書けるところ書いてみる
準備をしていなくても相談できます。メモは話す内容を思い出したり、伝え忘れを減らしたりするための補助として使用します。そのため、家族が専門職のような記録を書く必要はありません。
紙でも、スマートフォンのメモでも構いません。初めは次の項目を分かる範囲で書いてみてください。
| 整理しておくこと | 書く内容の例 |
|---|---|
| 今いちばん困っていること | 夜に何度も起きるため、家族が休めません |
| 最近の生活の変化 | 入浴、食事、移動、服薬などで、以前と変わったことです |
| 家族がしていること | 誰が、いつ、どのような手助けをしているかを書きます |
| 家族が難しいこと | 仕事の時間、体調、距離、費用などの制約を書きます |
| 本人が望んでいること | 本人の言葉や、大切にしている生活習慣を書きます |
| 今日、確認したいこと | 利用できる支援、費用、次の手続きなどを書きます |
初回面談では、介護保険被保険者証、認定結果が分かるもの、お薬手帳、主治医の連絡先など、手元にある情報を用意すると話を進めやすくなります。また、必要な書類は事前に事業所へ確認しておきましょう。
このように足りないものがあっても、それだけで相談を先延ばしにする必要はありません。

「大変です」に、出来事と家族への影響を添える
「大変です」「心配です」という気持ちも、そのまま伝えてよいものです。そこに具体的な出来事を添えると、何を変える必要があるのか考えやすくなります。
例えば、「夜の介護がつらいです」という相談は次のように整理できます。
この1週間は、母が夜中にトイレへ行くため、ほぼ毎晩2〜3回起きています。そのたびに私が付き添い、ベッドへ戻るまで1回10分ほどかかります。
私は翌朝から仕事があり、日中も眠気が続いています。今の対応を続けることが難しいため、夜の負担を減らす方法と、休める支援について相談したいです。
母は「できるだけ家で暮らしたい」と話しています。
整理するときのポイントは、「いつ・何が起きたか」「どのくらい続いているか」「どんな手助けをしたか」「生活にどんな影響があるか」です。
回数や時間は分かる範囲の目安で構いません。「正確には数えていませんが、夜に何度も起きています」と伝えても大丈夫です。記録のために家族の負担を増やす必要はありません。
原因が分からない場合は無理に説明をつけず、「理由は分かりません」と書きましょう。
また、例えば「財布を盗まれたと話しています」という本人の言葉と「認知症が進んだのでは」という家族の心配も、分けて伝えると状況を共有しやすくなります。

本人の希望と、家族の限界を両方伝える
本人は自宅で暮らし続けたいと望み、家族は今の介護を続けることが難しいと感じている場合があります。
この場合、面談までに家族の意見を一つにまとめなくても構いません。「父は自宅で暮らしたいと言っています。私は夜間の対応で体調を崩しており、このまま続けるのは難しいです」と、両方を伝えてください。
また、本人の希望は「在宅か施設か」だけではありません。朝はゆっくり起きたい、慣れた人に介助してほしい、好きな活動を続けたいといったことも支援を考える材料になります。家族側も仕事をしている時間、できる手助け、引き受けることが難しいことを具体的に伝えましょう。
厚生労働省は、ケアマネジャーが家族介護者の仕事と介護の両立支援を学ぶための研修資料を公開しています。働き続けるための相談も介護の相談に含まれます。
親がサービスを嫌がっている場合は、本人が実際に話した言葉を共有しましょう。嫌がる理由を確かめながら、見学や体験、利用する場所・時間帯の見直しなどを一緒に検討します。実際と違う説明をして連れ出すことはせず、本人が理解し、選べるような伝え方を考えたいところです。

本人の前で話しにくいことは、伝え方を相談する
本人が面談で「全部自分でできます」と話していても、普段は家族が手助けしていることがあります。その理由は遠慮や自分の状態の捉え方、その日の調子などさまざまです。
その場で言い争う代わりに、「普段の生活で家族が手伝っていることも補足してよいですか」と伝える方法があります。
また排泄の失敗や家族間の対立など、本人の前では話しにくい内容については事前に電話をしたり、別に話す時間を設けてもらったりできるか相談してください。その際、「この話を本人や他の家族にどう共有するか」も確認しておくとよいでしょう。
本人の話を聞く時間も大切です。家族の説明だけで生活や希望を決めてしまわないよう、ケアマネジャーと伝え方を考えます。
なお、ケアマネジャーとの面談と要介護認定のための認定調査は別です。相談メモはどちらにも役立ちますが、認定調査では普段の状態や実際の介助を正確に伝えることが大切です。メモの提出だけで認定結果が決まるわけではありません。

相談の終わりに、次の行動を確認します
面談が終わる前に次の点を確認しておくと、その後の動きが分かりやすくなります。
- 今回、何を優先して進めるのかを確認します。
- 誰が、何を、いつまでに行うのかを確認します。
- 利用開始までに必要な手続きや、費用の見込みを確認します。
- 状況が変わった場合の連絡先と、連絡方法を確認します。
希望するサービスでも空き状況や受け入れ条件などによって、すぐに利用できない場合があります。難しいときはその理由と、利用までの間に検討できる方法を聞いてみてください。
支援が始まった後も本人の様子、家族の負担、使ってみて困ったことを伝えます。介護生活は変わっていくため、一度決めた計画も状況に合わせて見直していきます。
もし話が噛み合わないと感じたら、「何が伝わっていないか」「どんな説明がほしいか」を具体的に伝えましょう。相談しづらい状況が続く場合は事業所の管理者や地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口へ相談する方法もあります。
担当者や事業所の変更も検討できます。事業所を変更する場合は新しい事業所の受け入れ、必要な届出、今利用しているサービスの引き継ぎを確認してください。また、急な体調変化については主治医などの医療職へ相談してください。意識がないなど緊急の場合は、ケアマネジャーからの返答を待たず119番へ連絡します。

【おわりに】まとまっていない悩みも、相談の出発点になります
介護の悩みは親の状態だけで決まるものではありません。家族の仕事、体調、住む場所、これまでの関係によって、続けられる支援の形は変わります。相談の準備は今の暮らしの中で何が難しくなっているのかを共有し、本人と家族が続けられる方法を考えるためのものです。
そのため、まずはいちばん困っていることを一つ伝えてください。
説明が途中で止まっても、
涙が出ても、
うまく言葉にならなくても。
そこから一緒に整理してもらってよいのです。本人の希望と家族の暮らし、その両方を相談の場に持ち込むことから支援の見直しが始まります。
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