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「施設に託す」という選択 ~自分の家族が認知症になったら~

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介護
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過去三回に渡り「自分の家族が認知症になったら」をテーマにお話ししてきました。

参照:まず認知症を知ろう ~自分の家族が認知症になったら~
  :認知症を受け入れる ~自分の家族が認知症になったら~
  :ともに過ごす ~自分の家族が認知症になったら~



まずは上の三記事を読んでもらい、そのうえで「情報収集とか難しそうだ」とか「ここまでのことはできそうにない」と感じられたのなら介護の専門家に任せるというのも一つの手です。


なので今回は「施設に託す」という選択を取った方がよい場合とその理由、どの種類を選べばよいかについてお話しします。

家族の面倒は家族が見るべきか

今なお「家族の面倒は家族が見るべきだ」という考えを強く持たれる方もいますが、認知症の方の介護は「家族の面倒」という範囲を超える場合が多々あります。



たとえば深夜徘徊一つとっても、毎日深夜に起き出して家中、あるいは家の外へ出かけてしまうことがあります。そうと気づいた家族が慌てて探し出し、近所の方や警察に厄介になるという話はそこかしこで聞きます。

このような事態を「家族の面倒は家族が見るべきだ」と言って家族だけで対応しようとすれば、家族はいつ起き出すかわからない家族を監視しながら夜を過ごすことになり、安心して眠ることすらできなくなってしまいます。


その日何事もなかったとしても朝になれば自然に起き出しますし、起きれば着替えやトイレ、食事などに介助が必要になってきます。そのうえ「次の日には徘徊するかもしれない」という不安は一向に解消されないのですから、常に警戒したままの毎日を過ごすことになります。


こうして肉体、精神ともにボロボロになった状態で毎日、いつ終わりが来るかもわからないまま介助をし続けることになるわけです。

一日二日であれば耐えられるかもしれませんが、1週間、2週間と続けていくうちに心身ともに限界が訪れて認知症の家族にたいして厳しく当たるようになってもなんら不思議ではありません。


「家族の面倒は家族が見るべきだ」という、情にほだした言葉一つによってここまでの責任を家族が背負う必要がはたしてあるのでしょうか。


事実として、厚生労働省の「平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、養護者(高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等)による虐待判断件数は17,249件、相談・通報件数は32,231件でした。

これが養介護従事者等(介護老人福祉施設など養介護施設または居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者)による虐待判断件数は621件、相談・通報件数は2187件と大幅に減少していました。

(参照:平成30年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果


この一点を見るだけでも介護従事者に介護を任せることが客観的事実として「家族を大切にしている」ことにつながるのが見えてきます。


また介護職員初任者研修を始めとした介護の資格をもつ職員による介護は、これまで社会全体が培ってきた介護知識・技術を習得したうえで行われる専門性をもった介護です。

そのような職員の集まる介護施設は「介護を提供する場」として安心・安全と言えますから、「認知症の家族がどう過ごしたいか」「家族としてどうしたいか」を検討するうえで介護施設の情報は大切なものになります。

施設を選ぶなら ~施設の種類と選び方~

では、実際に施設を選ぶときにはどのような施設を選べばよいのでしょうか。

施設選びを誤ると「欲しかったサービスが受けられない」「必要のないサービスを受けて費用がかさむ」などの問題が起きる場合もありますので、しっかりと見ていきましょう。


認知症の家族を託す施設として、おおまかに4種類が上げられます。

グループホーム(GH)
有料老人ホーム(介護付・住宅型・健康型)
特別養護老人ホーム(特養)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)


一つひとつの施設の特徴について説明していきます。

グループホーム(GH)

認知症対応型のグループホームは、専門スタッフの支援のもと認知症を持つ方々が集団生活を送る家のことで、住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスの1つです。

単調な生活になりがちな病院では認知症の進行が早まる可能性があることから、より実生活に近い生活と家庭的なケアを実現するために作られた介護サービスです。通常5~9人の高齢者がヘルパーさんの助けを借りて共同で生活を送ります。


入居条件は以下の通りです。

①65歳以上の高齢者で、かつ要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
②65歳未満の若年性認知症、初老期認知症と診断された、要支援2または要介護1以上の認定を受けている方
医師に認知症の診断を受けた方
施設と同じ市区町村に住民票がある方
⑤集団生活を営むことに支障のない方


少人数での共同生活では変化が緩やかでストレスが少なく、住み慣れた地域で暮らせるため、心穏やかに過ごすことができます。

また生活上の家事全般を職員と一緒に行うことで日常生活それ自体が認知症のリハビリにもなるので、より症状の進行を遅らせることができるのもメリットの一つです。


ただし看護師配置が義務付けられていないため、看護師がいないグループホームでは医療行為が必要になるなど身体状況によっては退去せざるを得ない場合があります。

最近では看護師を配置したり、訪問看護ステーションと密に連携したりと医療体制を整えているところも増加しているため、入居者の健康管理、日々の観察、医療処置の範囲、緊急時の対応なども併せて検討している施設に確かめてみると良いでしょう。

(参照:グループホーム|e-ヘルスネット(厚生労働省)
(参照:グループホームとは|費用相場やサービス内容(LIFULL介護)

有料老人ホーム(介護付・住宅型・健康型)

有料老人ホームとは、老人を入居させ、①「食事の提供」②「介護(入浴・排せつ・食事)の提供」③「洗濯・掃除等の家事の供与」④「健康管理」のいずれかのサービス(複数も可)を提供している民間企業の施設を言います。

そのうち

介護付介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
住宅型生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
健康型食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設


このように分けられ、おおまかに

24時間介護サービスを受けられ、安心した生活を送りたい方」→介護付
「介護サービスはそれほど必要ないが、生活支援が必要となる方」→住宅型
「生活の自立度が高く、元気な状態をなるべく維持したい方」→健康型


という目的別で、どの有料老人ホームを選ぶかを決めると良いかと思います。

ただしこのなかで介護付・住宅型は内・外部の介護サービスを利用しながら生活を続けることが可能ですが、健康型は介護が必要となった場合は退居しなくてはならないため、注意が必要です。


一般に「有料老人ホームは高額」と言われていますが、価格にはそれに見合う根拠があるため個々の施設の特徴や費用を調べてから実際に見学してみるとより適した施設が見つかるでしょう。

(参照:有料老人ホームとは?介護付・住宅型・健康型の特徴と費用|LIFULL介護

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームとは、常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して生活全般の介護(入浴、排泄、食事などの介護、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話)を提供する施設です。略して「特養」とも言われます。


特別養護老人ホームは公的な施設の中で数も多くて費用が比較的安いのが特徴です。そのため入所希望者も多く、申し込みをしてもすぐに入所できるとは限りません。

数か月から数年空きを待つこともありますので、「将来的に特別養護老人ホームに入居することを視野に入れ、一時的に他の施設に入居する」といったケースも見られます。


また入居の条件として原則として介護保険制度によって定められる「要介護度」が3以上の高齢者であることが求められますが、特例として入居が認められる場合もあります。

(参照:特別養護老人ホーム(特養)とは|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者が安心して暮らすためのバリアフリーの設備やケアの専門家による支援を受けることができる賃貸住宅になります。

食事サービスや掃除・洗濯・ゴミ出し・外出支援などの生活支援サービスなどを提供し、介護サービスは提供していないことが一般的で、介護サービスが必要な場合は外部の介護サービスを別途契約する必要があります。
(厚生労働省の定める「特定施設」の指定を受けているところでは『介護型』と呼ばれ、介護が必要になった場合は建物内に常駐するスタッフから介護サービスや生活支援サポートを受けることができます)


入居条件は60歳以上の高齢者、あるいは要介護者認定を受けた60歳未満の方が対象となっており、加えて施設ごとに様々な条件が設定されています。

一般的には「自立度の高い方が生活に必要なサービスを受けながら自由に暮らしていける住宅」であり、介護型では介護度の重い方や認知症の方にも対応している場合があります。


サービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームと比べて初期費用が低額であったり、「外出が自由」などの生活の自由度が高く自宅にいるような自由な生活を楽しめることがメリットになります。

一方で配置義務がないため看護師が常駐していないところが多かったり、寝たきりなどの重度の介護状態になると住み続けることが難しくなったりすることもあります。

外部の介護サービスを受けるのにも限度があり、介護サービスを必要としている場合は介護付有料老人ホームを検討された方がよいでしょう。

(参照:サービス付き高齢者向け住宅とは|かいごDB

「家族を託す」施設選びの目安

それぞれの施設を選ぶ際のおおまかな目安は以下の通りになります。

グループホーム介護付ホーム住宅型ホーム健康型ホーム特養サ高住
費用
設置基準
介護サービス
医療サービス
外部サービス
認知症対応
入居条件
退居条件
自由度
施設設備
地域密着
施設によって細かな条件が異なるため、詳細は検討されている施設へお問い合わせください。


あくまで「おおよその目安」なので、実際にどのようなサービス・条件が提示されているかは検討されている施設に直接確認された方がよいでしょう。


ポイントは施設の傾向を見たうえで自分の家族に合う施設はどこなのか、その当たりを付けることです。


たとえば「特養は費用が安いから」という理由だけで特養への入所を希望されても、入居条件が合わずに入れなかったり想像していたものと違ったりすることがあります。

特に施設は「終の棲家」となる大切な場所ですから、施設選びを誤ったときに生まれる後悔はぬぐい切れないものになりかねません。


施設訪問のたびに「あれ、なんだか元気がないな」と思いながらもその原因が施設選びにあることに気づけず、家族が入院して施設を離れたところで「実は…」と家族から聞かされたときに受けるショックがどれほどのものか。

それでも話せればまだ幸福なうちで、話せなくなってしまった場合、家族がなぜ元気がなかったのかすらもわからずにずっと悶々とすることになってしまいます。


こうならないように、複数の項目を照らし合わせて家族がより自分らしく生活していける施設を選ぶことが何よりも大切なのです。


【併せて読みたい記事】
まず認知症を知ろう ~自分の家族が認知症になったら~
認知症を受け入れる ~自分の家族が認知症になったら~
ともに過ごす ~自分の家族が認知症になったら~


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