「一晩だけでも、夜中に起きずに眠りたい」
そんな気持ちがあっても、親を施設にお願いしてまで休んでよいのか迷うことがあるかもしれません。本人が嫌がりそうだったり、費用が気になったりすれば相談することさえ後回しになってしまいます。
ショートステイは家族の休養にも利用できるサービスです。自治体が運営する施設の案内でも、旅行や冠婚葬祭と並んで休養を利用理由に挙げています。
ただ、利用できればそれだけで安心して休めるとも言い切れません。本人がどのように過ごすのか、いくらかかるのか、急な連絡があったら誰が対応するのか。気になることを一つずつ確かめておく必要があります。
今回は高齢者の家族介護を想定し、ショートステイを利用するまでの準備と本人の気持ちをどう受け止めるかについてお伝えします。
※制度・費用は2026年10月24日時点の公表資料に基づきます。実際の利用条件や料金は、担当ケアマネジャー、市区町村、利用する施設へ確認してください。
家族の「休みたい」も、相談してよい事です
ショートステイは自宅で介護を受けている方が短期間施設に泊まり、必要な支援を受けるサービスです。本人の生活を支えるとともに、家族の身体的・精神的な負担を軽くする目的があります。
短期入所生活介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが、常に介護が必要な方の短期間の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練などを提供します。
「家族が入院する」「どうしても外せない用事がある」といった事情だけでなく、「夜の介護が続いて、まとまって眠れていない」という困りごとも伝えて構いません。
休養の必要性を説明しようとして、限界まで我慢する必要はないと思います。今の暮らしで何が難しくなっているのか。そのまま話すところから始めてみてください。
例えば、ケアマネジャーへの相談なら、次のような伝え方が考えられます。
夜のトイレの付き添いが続き、私が十分に眠れていません。少しまとまって休める時間をつくりたいです。本人は泊まりに不安があるようなので、そのことも含めて相談したいです。
これは相談の一例です。きれいな文章にまとめる必要はありません。「休みたい。でも、親のことも心配です」と迷っている気持ちから話してもよいのです。
相談内容の整理には、以前の記事「ケアマネジャーに何を相談すればいい? 親の介護の困りごとを伝える準備とメモの書き方」も参考にしてください。

ショートステイを利用するまでに、何をするのか
本人に必要な支援に合わせて、利用先を考えます
介護保険のショートステイには、主に次の2種類があります。
| 種類 | 主な支援内容 | 主な利用先 |
|---|---|---|
| 短期入所生活介護 | 食事・入浴・排泄などの介護、機能訓練 | 特別養護老人ホームなど |
| 短期入所療養介護 | 医学的な管理のもとでの介護・看護、リハビリテーションなど | 介護老人保健施設、介護医療院など |
[参考:厚生労働省・短期入所療養介護]
要介護1〜5の認定を受けた方が利用でき、要支援1・2の方には「介護予防」の短期入所サービスがあります。
すでに担当者がいる場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談します。認定をまだ受けていない場合や相談先が分からない場合は、親が住む地域の地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口が入口になります。
空き状況の確認に加えて、面談や契約などを進めます
一般的には希望する時期や本人の状態を伝え、候補となる施設を探します。そのうえで、必要に応じて見学・面談を行い、ケアプランの調整や契約を経て利用を始めます。
施設によっては、医師が作成する診断書などが必要です。必要な書類の種類や様式は施設ごとに異なるため、受診や書類の作成を依頼する前に確認してください。申し込みから利用までの流れも、一緒に聞いておきましょう。
予約の受付時期も施設ごとに違います。自治体の事業者一覧には、2か月先の予約を受け付ける施設や臨時利用を随時受け付ける施設が掲載されています。医療的なケアへの対応にも違いがあります。
予定が決まっている場合は早めに相談し、空きだけでなく、必要な介護や医療的ケアに対応できるかも確かめておきましょう。

費用は「全部でいくらかかるか」を確認します
料金表を見るときに気をつけたいのは、介護サービス費の自己負担分だけで総額を判断しないことです。
ショートステイでは、基本的に次の費用がかかります。
| 費用 | 確認すること |
|---|---|
| 介護サービス費の自己負担 | 原則1割、所得によって2割・3割。送迎加算など、適用される加算を含めた金額を確認 |
| 食費 | 食事ごとの料金や、入退所日の食事の扱い |
| 滞在費・部屋代 | 個室・多床室など、利用する部屋の料金 |
| その他の日常生活費 | 希望して利用する日用品や理美容など、費用の内訳と金額 |
食費や部屋代などは施設との契約で決まります。また、在宅サービスの支給限度額(区分支給限度基準額)を超えた利用分は原則として全額自己負担です。デイサービスや訪問介護など、ほかのサービスも含め、月全体でいくらになるかを確かめてください。
なお、介護保険の短期入所サービスではおむつ代は保険給付に含まれ、別途徴収できないとされています。「日常生活費」として何が必要なのか内訳も確かめておきましょう。
相談するときは、「この日程で利用した場合、食費や部屋代も含めていくらになりますか」と尋ねると分かりやすくなります。キャンセル料が発生する条件も、一緒に確認しておきたいところです。

費用が心配なときは、軽減制度も確認してください
所得や預貯金、世帯・配偶者の課税状況などの条件を満たす方には、食費・滞在費の負担を軽減する制度があります。「特定入所者介護サービス費」などと呼ばれる給付で、利用するには、市区町村で「負担限度額認定」を受ける必要があります。
認定の有効期間は、原則として申請月の初日からです。利用した月の翌月に申請すると、前月の利用分には適用されないことがあるため、利用を考える段階で手続きを確認しておきましょう。郵送の場合の受付日や必要書類も市区町村に確かめ、認定証が交付されたら施設へ提示します。
これとは別に、介護サービス費の自己負担が月の上限を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」もあります。ただし、食費・滞在費・日常生活費は対象外です。名前が似ている制度もあるため、「どの費用を軽減できるのか」を分けて確認しましょう。
なお、2026年8月に見直しがあり、負担限度額認定の対象となる方のショートステイの食費は、次の額になっています。
| 利用者負担段階 | 食費の負担限度額・1日あたり(ショートステイの場合) |
|---|---|
| 第1段階 | 300円 |
| 第2段階 | 600円 |
| 第3段階① | 1,030円 |
| 第3段階② | 1,360円 |
この表はすべての利用者に適用される料金表ではありません。認定の対象となるか、どの段階に当たるかを市区町村へ確認する必要があります。滞在費にも一部見直しがあるため、以前の利用時と同じ金額とは限りません。
利用日数にも決まりがあります
介護保険での連続利用は原則30日までです。ただし、30日を超えて滞在した場合にその後の介護サービス費がすべて全額自己負担になるとは限りません。
例えば短期入所生活介護では、31日目を自費利用とし、32日目から保険給付の日数を数え直す取扱いがあります。一方、長期利用には別の報酬算定ルールもあるため、実際の自己負担は利用日程や条件によって変わります。
長めの利用が必要なときはどの日が保険の対象になり、どの日が自費になるかを、ケアマネジャーと施設に確認してください。
また、短期入所生活介護と短期入所療養介護を合わせた利用日数は、特に必要と認められる場合を除き、認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにする決まりがあります。必要性に応じて例外的な利用を検討する場合も、ケアマネジャーを通じて市区町村の取扱いを確認します。
そしてこれは「毎月30日まで自由に使える」という意味ではありません。継続して利用する場合は本人の生活と家族の負担を踏まえ、無理なく続けられる支援の組み合わせを相談しましょう。

本人が嫌がるときは、気になっていることを確かめます
家族が休みたいと思っていても、本人から「行きたくない」と言われれば、どうしたらよいか迷うものです。
ここで、利用を嫌がる理由を「わがまま」「認知症だから」と決めつけずに聞いてみたいところです。例えば知らない場所で眠ることが心配なのか、トイレを頼みにくいのか、いつ帰れるか分からないのか。気になっていることによって必要な説明や準備は変わります。
厚生労働省の『認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン』では、本人が理解しやすい説明をし、決断を急がせず、意思を確認することが重視されています。本人に無理のない範囲で、ショートステイの体験利用を提案することも選択肢として示されています。
例えば施設の写真を一緒に見る、見学できるか相談する、帰宅予定を確認できる形にする。こうした方法が本人に合うか、施設やケアマネジャーと考えてみてください。
ただし、体験利用をすれば必ず納得してもらえるわけではありません。利用後に気持ちが変わることもあれば合わないと感じることもあるでしょう。その反応も次の支援を考えるための情報です。同じガイドラインは本人と家族の意向が対立するとき、専門職が家族の悩みや理由も確認し、調和を図ることを求めています。
本人の希望を聞くときには、家族ができることの限界も伝えてください。本人の安心と家族が休める時間。その両方を家族だけで抱えずに考えることが大切です。

希望日に利用できないときは、次の方法も相談します
候補の施設が満室だったり必要なケアへの対応が難しかったりして、すぐに利用できないこともあります。自治体が公開する空床情報でも空き状況は変動し、本人の状態によっては受入れが難しいと案内されています。
その場合は「利用できませんでした」で相談を終えず、次の点を一緒に確認するとよいと思います。
- 別の施設や日程、キャンセル待ちを検討できるか。
- 利用できるまで、通所や訪問サービスなどを調整できるか。
- 家族の急病などの場合、地域に緊急の受入れ制度があるか。
例えば豊島区には、介護者の急病や負傷などに対応する緊急ショートステイがあります。ただし、こうした制度は自治体ごとに対象や手続きが異なり、どこでも同じ条件ですぐ利用できるわけではありません。
「今夜から介護できる人がいない」など、急いで支援が必要な場合は、その切迫した事情も伝えてください。先の予約相談と目の前の対応が必要な相談とでは、検討すべきことが変わります。

利用前には、生活のことと連絡方法を共有しておきます
泊まる日が決まったら、荷物の準備とともに本人が普段どのように暮らしているかを伝えます。次の表は相談の際に使う確認項目の例です。
なお、すべてが全国共通の必須項目ということではありません。
| 項目 | 伝える・確認する内容の例 |
|---|---|
| 食事 | 食べやすい形、アレルギー、食事の手助け |
| 排泄・移動 | トイレに行く時間帯、必要な介助、使っている用具 |
| 睡眠 | 普段の就寝時刻、夜間に必要な支援 |
| 薬・医療的ケア | 薬の内容・飲む時間・持参方法(一包化や予備の要否など)、施設で対応できる範囲 |
| 本人の希望 | 好きな過ごし方、苦手なこと、安心できる物や習慣 |
| 送迎・持ち物 | 送迎の有無と時間、衣類や日用品の準備・持ち物への記名 |
| 連絡方法 | 緊急時の連絡先、第一連絡先がつながらない場合の対応 |
特に、緊急時の連絡方法は決めておきたいことです。実際に公立施設の利用案内でも緊急連絡先の設定が求められています。
家族が遠方に出かける予定なら、それも事前に伝えておきましょう。休んでいる間の連絡をすべて一人で引き受けるのが難しい場合は、代わりに連絡を受ける人を決められるか関係者と相談しておく方法もあります。
利用した後は、「家族が休めたか」も振り返ります
帰宅した後は本人がどのように過ごしたのかを聞き、施設からも滞在中の様子を教えてもらいましょう。気になる変化があれば施設やケアマネジャー、必要に応じて医療職に伝えます。
そのとき、家族自身がどう過ごせたかも確認してほしいと思います。
眠る時間は取れたか。
気になって何度も電話をしてしまったか。
準備や送迎で疲れてしまわなかったか。
予定を詰め込み、結局いつもと同じように忙しかったかもしれません。
そうしたことがあれば、利用する日数や送迎、連絡方法を次回に向けて相談できます。本人の過ごしやすさと家族の休みやすさを少しずつ整えていく。その振り返りまで含めてショートステイを考えてよいのだと思います。
休みたい気持ちを言葉にしても、すぐには罪悪感が消えないこともあるでしょう。気持ちが整理できるまで、相談を待つ必要はありません。
「少し休みたいです。でも、本人のことが心配です」
その両方を伝えるところから、次の暮らし方を一緒に考えてもらってください。

【まとめ】ショートステイを活用し、無理のない介護を
ショートステイは家族が休むためにも利用できるサービスです。利用を考えるときは、次の点を確認しておきましょう。
- 担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに、家族が休みたい事情と本人の希望を伝える。
- 費用は食費・滞在費などを含む総額で確認し、軽減制度の対象になるかも相談する。
- 本人が嫌がるときは、不安の理由を確かめ、説明や見学、体験利用などを一緒に考える。
- 利用前には普段の生活や緊急時の連絡方法を共有し、利用後は本人の様子と家族が休めたかを振り返る。
最初から利用先や日程を決めておく必要はありません。「夜に眠れていない」「少し自分の時間がほしい」と、今困っていることから相談できます。
本人が安心して過ごせることと、家族が休めること。
その両方を大切にしながら、これからの介護を支える方法を考えていきましょう。
休むことに迷うときに読みたい『がんばらない介護』
休む必要があると分かっていても、「自分がもう少し頑張れば」と考えてしまう。そんなときに、介護との向き合い方を考える一冊として紹介したいのが橋中今日子氏の『がんばらない介護』です
家族の介護を経験した理学療法士の著者が、専門職への相談や家族との役割分担、介護から離れる時間のつくり方などを取り上げています。睡眠や息抜きについても扱っており、この記事でお伝えした「家族が休める時間をどう確保するか」という悩みにつながる内容です。
親のことを考えるうちに自分の疲れを後回しにしてきた方は、今の困りごとに近い項目から目を通してみてもよいと思います。誰に何を頼めそうか、自分はどんな時間を取り戻したいのか。次にケアマネジャーへ相談することを整理するきっかけにもなりそうです。
『がんばらない介護』橋中今日子 著/ダイヤモンド社/2017年3月刊。
制度や費用については、現在の自治体の案内と併せて確認してください。
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