介護の資格ってどこまで必要?

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介護
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先日twitterで「認定介護福祉士」についてのつぶやきを見かけました。
資格の是非やどれくらい稼げるかといった話になっており、「そもそも資格ってそんなに必要なのかな?」と考えるようになりました。


なので今回は「介護の資格ってどこまで必要なのか」について僕の考えをお話していきます。

まずは「資格」について知ろう

資格を考えるにあたっては、まず介護に限定せず「そもそも資格とは何か」から見ていくと答えが見つかりそうです。

資格(しかく、英:Qualification、Certificate)は、ある行為を行うために必要若しくは相応しいとされる地位や立場をいう[1]。世間一般には組織内での地位を言う。さらに仕事上任務に就くために必要な条件として公にみとめられる能力を指す[2]

資格 -Wikipedia-


今回考えるのは「仕事上任務に就くために必要な条件として公にみとめられる能力」だと考えられますので、ここを深堀していきましょう。


まず資格の種類として大まかに「国家資格」「公的資格」「民間資格」があります。

国家資格:国の法律に基づいて各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるもの
公的資格:公的性質を帯びている国家資格ではない資格
民間資格:民間団体や個人等が、自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える資格


大切なのは「どこがその資格を認めているか」です。

国家資格ならその国、公的資格なら都道府県や地方自治体など、民間資格なら民間団体や個人の影響が及ぶ範囲で効果を発揮します。


例えば「介護福祉士」は日本の国家資格ですから、日本国内ならどこにいても介護福祉士としての能力・知識があると国が保証してくれます。

一方「介護支援専門員」は都道府県の公的資格ですから、その資格を取得した都道府県で登録されるためその都道府県でしか効果を発揮しません。(もし都道府県をまたぐ転居をする場合は転居先の都道府県に介護支援専門員として登録し直す必要があります)


このように「どこがその資格を認めているか」によって資格が活かせる範囲や条件が変わってくるわけですね。

次に資格の特色について。
介護の資格を考えるときに重要なのは「業務独占資格」と「名称独占資格」、「必置資格」です。

業務独占資格:その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格
名称独占資格:資格取得者以外のものにその資格の呼称およびそれに類似したり紛らわしい呼称の利用が禁止される資格

必置資格:ある事業を行う際に、その企業や事業所にて特定の資格保持者を必ず置かなければならないと法律で定められている資格。


もう少し簡単に分けると

  • 業務独占資格:その資格を持つ人しかやってはいけない
  • 名称独占資格:その資格を持つ人しか名乗ってはいけない
  • 必置資格:その資格を持つ人を必ず置かなければならない


ということになります。
厳密に言えば業務独占は「有償業務独占資格」「無償業務独占資格」「行為独占資格」に分けられます。


例えば「看護師」は業務独占規定と名称独占規定があり、看護師以外に看護業務を行っては行けないし、看護師を名乗ってはいけないことになります。

一方「介護福祉士」は名称独占資格であり、介護福祉士以外に「介護福祉士」を名乗ってはいけませんが、介護業務は誰が行っても問題ありません。


このような性質を持つため、「業務独占資格」は他の資格に比べると負うべき責任が重い分その業務に携わる人の信用度も高くなるわけですね。

それだけに介護士のなかには「介護福祉士も(地位向上のため)業務独占資格にしたほうがいい」と主張する方も出ています。

介護福祉士を「業務独占資格」にしたらいい?

この話の前提として知っておいてほしいのは、介護現場で働く介護士さんは施設側にも利用者側にも「求められる立場」である、ということです。

どちら側からも「あれをしろ、これをしろ」と求められて応えなければなりませんから、板挟みで弱い立場にあります。それは介護リーダーやサービス提供責任者であっても変わらず、介護従事者は常に使われる立場に回されてしまいます。


一方、施設に常駐する看護師さんや訪問に来られる医師の扱いは違います。
医療であれ看護であれ、医療従事者に対し施設側・利用者側は「感謝」を言葉や態度で示すのです。

ここには「治療(cure)」と「世話(care)」の差が大きく出ており、その差を肌で感じる介護従事者が「せめて介護福祉士も『業務独占資格』ならもう少し重用されるのではないか」と思ったとしても致し方ないことだと思います。



しかし仮に介護福祉士を業務独占資格にしてしまうと「介護福祉士以外は介護業務をしてはいけない」ことになってしまいますから、無資格者や介護職員初任者研修であっても介護業務ができず、現場は今よりもさらに人手不足となり過酷になります。

さらに業務独占の範囲が「行為独占資格(行為そのものが独占)」まで想定しているのだとしたら家族介護すら禁じられてしまうため、介護サービスを必要とする人にすればいよいよ生活・生命の危機に至る事態になってしまいます。


業務独占資格になることで相対的に介護福祉士の需要は高まりますが、「介護福祉士の地位向上のため」にその状況を生み出した介護福祉士という職種に対して人々が抱く感情は「余計なことをするな」になるのは明白ですから、地位向上どころか失墜することになります。


そもそも、です。


介護と医療・看護は別ですから、介護従事者は純粋に介護の質を高めるべきです

医療・看護が現在の地位にあるのは長い歴史と研鑽があってのこと。
介護もまた同じように長い年月をかけてその価値を研磨し、高めていけばよいのです。


そして介護の質を高める手段の一つとして「介護の資格」があるのです。

介護福祉士までの流れ

ここまでの話を踏まえたうえで「介護福祉士までの流れ」を整理します。


介護福祉士の受験資格は(実務経験ルートでは)実務経験三年以上に加えて「実務者研修」もしくは「介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修」になっていますので、すぐに取れるものではありません。

となれば「介護福祉士になるための資格」として「介護職員初任者研修」を取り、その後「実務者研修」を取り、介護福祉士を目指すのが現実的な流れになります。

受験資格費用期間
介護職員初任者研修なしおよそ4万~(※1)130時間
実務者研修なしおよそ9万~(※1)最大450時間(※2)
介護福祉士実務者研修を修了していること
3年以上の実務経験
受験手数料15,300円
登録免許税9,000円
登録手数料3,320円
2020年12月現在  ※1 費用は地域や実施主体により異なる ※2 取得済の資格による


細かい流れについては「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」を確認していただくとして、これから介護の資格を取ろうという方はおおよそこの流れを追うことになります。


また「介護福祉士」が採用条件であったり資格手当の対象であったりもしますから、介護分野で働き、介護の専門職としての知識や技術を修めるためにも必ず押さえておきたい資格です。

一つひとつの資格には相応の時間と費用が掛かりますが、介護の仕事をするうえでほぼ欠かせない資格となりますので時間の猶予がきくうちに介護福祉士を目指しましょう。

認定介護福祉士について

それではここから「認定介護福祉士」について見ていきましょう。


「介護福祉士の上位資格」として「認定介護福祉士」という資格が2015年より一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が認定を開始しました。


認定介護福祉士の定義は以下の通りです。

認定介護福祉士とは、居住・施設系サービスを問わず、多様な利用者・生活環境、サービス提供形態等に対応して、より質の高い介護実践や介護サービスマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケア等に対応するための考え方や知識、技術等を認定介護福祉士養成研修で修得した介護福祉士のことです。

認定介護福祉士とは -一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構


この定義を見る限り「介護福祉士よりもさらに専門的な業務を行う」ことが認定介護福祉士であるようです。

サービスの多様化に合わせて介護の専門職として必要な知識・技術等をさらに向上させることが求められていることがわかりますね。


続いて認定介護福祉士のねらいを見ていきましょう。

1.生活を支える専門職としての介護福祉士の資質を高め、
  ①利用者のQOLの向上
  ②介護と医療の連携強化と適切な役割分担の促進
  ③地域包括ケアの推進 など
介護サービスの高度化に対する社会的な要請に応える。

2.介護の根拠を言語化して他職種に説明し共有したり、他職種からの情報や助言の内容を適切に介護職チーム内で共有することで、他職種との連携内容をより適切に介護サービスに反映することに寄与する。

3.介護福祉士の資格取得後の継続的かつ広がりを持った現任研修の受講の促進と資質の向上を図る。つまり、介護福祉士資格取得後も介護業界で努力し続け、継続的に自己研鑽する拠り所となる。

4.介護福祉士の資格取得後のキャリアパスの形成

認定介護福祉士のねらい -一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構


「介護サービスの高度化に対する社会的な要請に応える」
「介護の根拠を言語化」
「他業種との連携内容をより適切に介護サービスに反映することに寄与する」
「介護福祉士資格取得後も介護業界で努力し続け、継続的に自己研鑽する拠り所」
「資格取得後のキャリアパスの形成」

この辺りが「認定介護福祉士を目指すかどうか」の判断基準になります。


次に受講資格と費用、期間などの条件を見てみましょう。

受講資格費用期間
 認定介護福祉士 介護福祉士としての実務経験5年以上およそ30万~60万(※1)合計600時間(約1年半)
(※1 費用は実施する主体に異なる。また日本介護福祉士会の会員かによっても異なる)


「介護福祉士の上位資格」と位置付けてあるように、その業務は介護福祉士の延長線上にあるものです。経験を重ねた介護福祉士が「社会福祉士及び介護福祉士法 第四章 第四十七条の二、資質向上の義務」を果たすべく定められたものと言ってもよいでしょう。

認定介護福祉士として学びを深め、より専門的な介護知識・技術を介護・福祉分野に広めていくことは社会福祉の実現に一役買うことでしょう。


とはいえ、条件を見ると気軽に目指せる資格ではないことがわかります。


30万~60万という決して安くない金額を支払い、日々介護業務に当たりながら約1年半ほど掛かる研修を受ける必要があります。

そのうえ研修内容にはレポートの提出や筆記試験があり、その後の書類審査を通してようやく認定介護福祉士と認証されるわけですから、よほど強い動機でもない限り目指すことすら適わない資格とも見えます。

認定介護福祉士を取るべきか?

資格取得を考えるうえで大切なのは「何のために資格を取るのか」で、そのために冒頭で「資格」の定義を共有させてもらいました。


ちょっとおさらいしてみましょう。

国家資格:国の法律に基づいて各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるもの
公的資格:公的性質を帯びている国家資格ではない資格
民間資格:民間団体や個人等が、自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える資格

業務独占資格:その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格
名称独占資格
:資格取得者以外のものにその資格の呼称およびそれに類似したり紛らわしい呼称の利用が禁止される資格

必置資格:ある事業を行う際に、その企業や事業所にて特定の資格保持者を必ず置かなければならないと法律で定められている資格。


この二分類から判断すれば「業務独占資格」かつ「国家資格」が最優先で取るべき資格となります。

その資格でなければ業務ができませんから、「業務独占資格」は優先的に取らないといけません。そのうえで「誰がその資格を保証するか」から考えれば「国家資格」であることが望ましいわけですね。

つまり「独占」が先で「保証母体」が次に来るのが資格を目指す順番として正しい訳です。
ただし受験資格が設定されている場合は受験資格を満たす資格を取るのが先になります。

先ほどお話しした「介護福祉士を取るために実務者研修を取る」流れですね。


この観点から介護の資格を整理すると以下のようになります。
なお介護にかかわる資格は他にも多くあり、福祉分野に広げれば「社会福祉士」をはじめ多岐に渡ります)

資格母体 資格 母体
介護職員初任者研修名称独占(※1)公的介護支援専門員必置公的
実務者研修名称独占(※1)公的福祉用具専門相談員公的
介護福祉士名称独占国家福祉住環境コーディネーター公的
認定介護福祉士民間認知症ケア専門士民間
※1 訪問介護員が名称独占にあたる


このように一覧にしてみると「介護福祉士」と「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の二つは介護分野で働くのであれば押さえておきたい資格と言えます。

また介護福祉士の受験資格となる「実務者研修」も必修であることはお話しした通りです。


そして「認定介護福祉士」は「独占資格」「保証母体」という枠組みから捉えると資格取得の必要性に陰りが見えます。


2020年12月現在で介護福祉士側が「認定介護福祉士」になるメリットは「認定介護福祉士と認証される」ことであり、給与アップや待遇改善が保証されているわけではありません。

もちろん認定介護福祉士養成研修を終え書類審査を通るといった「認証」は介護士としての能力を実施団体が保証するということですから、介護士としての信用は「広く」なります。


問題なのは現段階ではその「広さ」が十分とは言えない状態であり、「30~60万円」「約1年半」といった自分の大切な資源を費やす価値があるかが疑問視されていることです。

加えて認定介護福祉士の業務が独占ではない以上学ぶ前からすでに現場からの求めに応じて同様の業務を実践している介護福祉士の皆さんがいるため、その業務の専門性が社会に受け入れられて初めて認定介護福祉士の資格が輝くものと考えます。


今後の普及によって改善されることもあるかもしれませんが、今すぐ取るべきかどうかは個人の裁量に委ねられるわけですね。

まとめ ~ 介護の資格ってどこまで必要? ~

これまでの話から「介護の資格はどこまで必要か」をまとめます。


前提として介護の資格には「業務独占資格」はありませんから、本来「取らなければならない資格」というものはありません。
しかし採用条件として資格が必要となる場合がありますから、その時は取得を目指して学んでいけばいい訳ですね。


大切なのは「介護分野で何がしたいか」であり、「周りから求められるから資格を取る」といった理由で資格を取らないようにしましょう。

なぜなら資格を取るためには多くの時間やお金、労力を必要とします。
そのうえ「それだけ費やしたのだから確実に資格が取れる」とは限りません。


それだけあなたの大切なものを使うのですから、それを他人に操られるような形で得ようとしてしまえば「資格を取った後の見返り」を求めてしまいます。

そしてそうした期待に相手が応えなかったとき、介護・福祉そのものに興味・関心を失うことになりかねません。


以下は僕が現在持っている、介護の仕事で使用する目的で取得した資格の一覧です。

ホームヘルパー2級福祉住環境コーディネーター2級
介護福祉士相談支援専門員
介護支援専門員(更新停止)甲種防火管理者
福祉用具専門相談員カラーコーディネーター2級


これだけ資格を持っていようとも、現在仕事で活用しているのは介護福祉士のみです。

一つひとつの資格取得に費やした時間や労力、お金を想像してもらうと「割に合わない」のが見て取れるかと思います。


もちろん資格取得の際に学んだ知識や技術は日ごろから使用していますし、それによって目の前の利用者さんや職員さん、施設に貢献して評価をあげることはできます。

ただそれは「みんなが幸せになってくれて嬉しいなぁ」といった個人の満足感の話であって、資格取得は人から強制されるものではありません。

特に介護支援専門員は合格率10%ほどの難易度を誇るものですから、この資格を「周りに求められたから」取るというのは動機づけとして成り立たないことがわかりますね。


このように資格は「がむしゃらに取っていけばいい」ものではありません。
必要な資格を適切な労力で取得し、自分の意志で現場に活かしていくことが大切なのです。

そして介護分野で現場で活かす資格を求めるのであれば「自分がどういう介護士になりたいか」をまず定めるところからになります。


その為にはこれまでの記事「自分と向き合う」でお話ししたように、自己分析についての学びを深めて実際に行っていくことが重要になります。


なりたい介護士になるために、必要な資格を取りに行きましょう。


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