「介護士の妥当な年収」のために増税を受け入れられるか

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先日、ITmedia ビジネスオンラインの記事にて「介護士の妥当な年収はいくら? 実態は約370万円」とという記事を読みました。

「介護士」の妥当な年収はいくら? 実態は約370万円」/ITmedia ビジネスオンラインhttps://www.itmedia.co.jp/business/articles/2301/02/news016.html


記事内では「介護士が欲しいと思う平均年収」と「実際にもらっている平均年収」にギャップがあると伝えられていました。

そこで今回は「介護士の妥当な年収」についてお話ししていきます。

介護職の平均年収、その鍵を握るのは『税』

介護労働安定センターの「令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要」では、介護士の平均年収は「約366万円」であり、同年の全体平均年収443万円を大きく下回る結果となりました。

また、基本的にどの年代を見ても「一般的な職業」に比べて「介護職」の平均年収が下回ることは、過去の記事「手取り15万からの介護士」の『豊かさ』を考える①介護の豊かさでもお話しした通りです。


こうした現状を踏まえ、2022年2月より『介護職の賃上げ(現:介護職員等ベースアップ等支援加算)』が行われ、月9000円ほどのベースアップが行われるようになりました。

ただしこの加算が『利用者負担』である以上、やがて介護保険制度を受ける全ての国民(介護職も含む)が負担する形となり、事実上の増税となったのは過去の記事「介護職の賃上げ」は「貧しさ」を生むで予測した通りでした。


これは「介護職は貧しければいい」という話でなく、介護職の給料、その多くは介護保険制度の財源である『保険料』及び『公費』から賄われる以上、「国に給料アップを望めば介護職だけでなく国民全体を貧しくする」という構造を指摘したものでした。


このように、介護職の給料と『税』は切っても切り離せない関係にあること。
これを知らないまま平均年収が妥当かどうかを考えてしまっては、介護職自身を苦しめる結果となりかねないのです。

『増税ループ』を招く「介護職の給料アップ」

先に紹介した記事では

日本人の平均年収は443万円で、介護士と比較すると、約72.8万円の差があった。「介護士の平均年収は、他の職種に比べて低い水準にあることがうかがえた」


と述べられており、現役の介護職のコメントでは「年収を上げてくれないと続けられないのも事実」と寄せられていました。


このような背景から「介護職の給料はもっと上げるべきだ!」という主張が巻き起こるのは至極真っ当にも見えますが、介護職の給料は広い意味での『税』と切り離して考えられない以上、国の税収が上がらない限り実現されないと言えます。


国が税収を上げるためには「経済を活性化させる」か「増税を行う」かになりますが、そのうち経済成長については、

国土交通省「長期的な経済の低迷
厚生労働省「人口動態総覧の年次推移
日経BizGate「経済4誌が占う「2023年の日本経済

を見る限りでは人口が減り続ける中で経済成長が上向きとなる要因が見当たらず、経済成長を期待するのは厳しいのではないか、と予想されます。


そうなれば自ずと『増税』によって介護職の給料アップを図る流れとなり、額面上の給料と共に実質的な負担も上がり、「給料が足りない」実感が生まれ、また国に給料アップを訴え…という『増税ループ』が生み出されることになります。


こうなると「介護職の給料は低い方が社会のためなのではないか?」という見方も出てきます。介護職の給料を抑え、介護保険料や公費の支出を抑えれば利用者負担も軽減し、多少なりとも財政は健全化するのではないか、と。


しかし現実には介護人材不足は深刻化する一方で、その上介護職の給料を減らすようなことになれば介護の担い手を更に失い、介護保険制度そのものが崩壊しかねません。

どうあっても介護職の待遇は改善していかなくてはならない一方で、介護職の給料は『介護報酬』の枠内にいる限り「増えても減らしても問題が起きる」構造にあり、多くの介護職がこのことを理解しないまま給料アップを望む状況にあるのです。

「介護職の給料」問題は『介護の副業』で解決する

『介護職としての給料』問題を直接解決しようとするのではなく、介護の『副業』を支援する形で「介護を担う人材」「介護職の給料への不満」を解決した方が賢明と言えます。


この「介護の副業」とは

①介護職が副業を行うこと
②他職種が介護を副業にすること

の両方を指します。


①の場合、「就業規則の確認」「納税の義務と確定申告」といったルールの確認や、「どのような副業があるか」「どこで仕事を得るか」などの副業に関する知識・スキルが求められます。

以下の本が導入部分としておすすめです。


以前の記事「勉強する介護士」が少ないのはなぜ?でお話ししたのは、

勉強が直接給料に結びつかないから勉強する介護士は少ない

というものでしたが、介護職の副業を支援すれば自分で稼げるようになるために自分の得意分野の勉強を始めます。


そこで学んだものは本業である介護・福祉に活かせるものも多く、また副業に肯定的な職場に対して自分の学びを還元する意識この職場で長く働きたいという意識も芽生えていくことでしょう。


②の場合、他業種の方に介護の一部を担ってもらうことで、現場の人材不足を解決していくことになります。

以前の記事「【体験レポート】スケッターから見える介護の未来」でお話ししたように、介護・福祉の有償ボランティアサービス「スケッター」では、人手を必要とする介護施設と働きたい人をつなぐマッチングサービスを行なっています。


スケッターでは「食事の準備」「お掃除」「レクリエーション」といった専門的なスキルや資格がなくてもお手伝いできるボランティアの募集がされることが多く、


介護の資格はないけど、親のこともあるし、介護の現場を見てみたい


という方にとって介護の体験ができる絶好の機会となりますから、スケッターの導入は介護の人材不足を解決する一手となります。

まとめ 〜介護職も『自立』の意識を〜

今回は「介護士の妥当な年収」というテーマから、介護職の給料アップに潜む『増税ループ』とその脱出策としての『介護の副業』についてお話ししました。


そもそもの話ですが、通常の介護職は業務として『自立支援』を行なっている一方で、給料形態を介護保険制度の介護報酬に依存する形となっています。

そのため介護職自身が自立しているとは言い切れず、その中で行われる『介護』というものは実質的に「介護報酬をもらうための『介助』」に絞られていきます。

そうした依存体質の中で給料アップを望めば、報酬単価の引き上げや新たな処遇改善加算を『権利』として国に求めることばかりに意識がいくことも自然と言えます。


しかし国に給料アップを求めた結果、介護士自身も含めた国民全員に負担を強いるような仕組みを作られてしまっては本末転倒ではないでしょうか。


介護とは「たすけ(介)」「まもる(護)」ことであり、そこには一人の人間として『自立した心』が求められます。


もし介護保険制度では利用者の『自立心』や『尊厳』を守れない事態となった時、介護保険制度によって生かされるばかりの介護職では利用者を救う選択ができません。

そればかりか介護報酬が設定された『介助』を行えないことに不満を抱えて


私の言うことを聞いてください


と、介護職自ら利用者の『自立心』や『尊厳』を傷つけるような言動をとってしまう可能性があります。


そのような事態を避けるためにも『介護の副業』は大きな役割を果たします。
なぜなら収入の自立は生活の自立であり、生活の自立は『人間としての自立』でもあるからです。


介護職がその本分を全うしようとすれば「収入が一部でも自立できているか」が問われます。
また選ばれる介護施設を目指すならば「介護職が快く、豊かに働けているか」が問われます。

そのどちらも制度への依存が強いほど実現困難となっていきます


介護士の給料についても、本来ならば『自分事』ですから

「自分は給料アップのためにこれ以上何の努力もしなくていい」
「社会のために働いているのだからもっと優遇されるべきだ」

といった依存心をあらわにするのではく、

「自分がお金を欲しがっているのだから、自分でなんとかしてみよう」
「みんなの税金で養われている以上、下手に迷惑をかけるわけにはいかない」

といった自立心を見せる方が好かれる介護士になれると思います。


介護ブログの他にも、介護ニュース等などを取り上げるnote、読書にまつわるアメーバブログを運営しております。



また僕が介護を考えるうえで参考になった書籍を紹介しますので、よかったら一度読んでみてください。


本からの学びは揺るぎない自信へとつながっていきます。

介護を自分の「感情」頼りにするのではなく、知識や経験に裏付けられた「事実」と併せて行うことで、介護はすべての人を豊かにしていくことができるのです。


一緒に学んでいきましょう。

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