「勉強する介護士」が少ないのはなぜ?

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今回は介護士が勉強する意味について考えていきます。

これを読んでもらえると「介護をするために勉強をする人」は多くても「勉強する介護士」が少ない理由が

①そもそも社会人は勉強していない
②そのうえ介護士は勉強の効果を得られにくい
③介護士によっては「勉強することで『人のぬくもり』が冷める」と考えている

以上3点から生まれていることがわかります。

そのうえで「勉強する介護士」が得られるものについてお話ししますので、最後までお付き合いよろしくお願いします。

そもそも社会人は勉強しているか?

介護士が勉強する意味を考えるにあたり、まずは社会人全体の勉強時間を見てみましょう。

まず、総務省統計局が出した平成28年社会生活基本調査では、働いている人の一日の平均学習時間は6分とされています。

もっともこれは平均ですから勉強されている方はもっと勉強しているし、そうでない方はそうでもない、と言えますね。


また株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査結果では、新人の半数、若手の6割、中堅の7割が自主的な学習に取り組んでいないと発表しています。

調査発表:社会人の1週間の学習時間は5時間以下

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ


ここでは自主的な学習に費やしている1週間の平均時間は約4時間とも書かれており、働きながら勉強している人の一日当たりの勉強時間は平均約34分となりますね。


こうして数字を見てみると「そもそも皆勉強していない」ということがわかりますね。

まず勉強するだけで社会人全体の1/2になり、そのうえ一日で一時間も勉強すればかなり希少な人材になれるという話です。

勉強する動機

先ほど同様、株式会社リクルートマネジメントソリューションズのプレスリリースによれば、社会人が勉強する動機の上位3つは


現在行っている仕事でより高いパフォーマンスをあげるため
特に明確な目標・目的はないが自己研鑽のため
昇進・昇格のため


となります。

少し意外に感じましたが、昇進・昇格よりも仕事そのものの質を上げるために勉強する方が多いようです。介護士が勉強する動機として考えられるのも同様で、このあたりに職業の違いはないように思われます。


ただ介護士には民間による資格も幅広く設定されており、「仕事でより高いパフォーマンスをあげる」という動機が色濃く出ているように見受けられます。

介護そのものは資格を必要としない業務ですから「介護士として自分がどうなりたいか」によって勉強の動機は変わってきますね。

介護の賃金は上がりにくい

僕自身は大学生のころから資格試験の勉強ばかりしていて、就職や賃金アップを目指して勉強する時間が長かったです。

福祉の資格でいうと、福祉用具専門相談員や福祉住環境コーディネーター2級、ホームヘルパー2級に介護福祉士、期間は切れていますがケアマネージャーの資格を持っていたこともありましたし、今は相談支援専門員の資格も持っています。


とは言え、実際の仕事に活かしているのは介護福祉士くらいで、他の資格は知識として押さえているくらいになります。

採用面での優遇はされましたし資格手当によって月5000円ほどの賃金アップが望めましたが、時間と労力が賃金と見合っているかどうかは判断の難しいところです。


と言うのも、元々介護という仕事自体が生産性によって収入を上げる仕事ではありません。国の定める介護保険サービスを提供した場合、その介護報酬は社会保障費の一部が割り当てられる仕組みになっており定額なのです。

施設によっては独自のサービスを提供して収益を上げるところもありますが、それは介護報酬の本筋から外れたところにあります。施設がその仕組みを採用しないと介護士は収入を上げられませんから、定められた枠にいる限り勉強と収入アップは結び付かないのです。

「現場で活かす学び」という視点

一方で僕が自己研鑽の一環としてビジネス書や実用書から勉強していると、現場で起きる問題を解決する力が身についてきました。

男女の考えの違いから、チームワーク論、リーダー論。人間心理と把握、睡眠方法など、学べば学ぶほど目の前で起きるトラブルの原因に思い当たる点が出てきたのです。


そうなれば当然「じゃあせっかくだし勉強したことを試してみようか」と考えるようになり、そこから失敗と試行錯誤を繰り返すことで現場からの信用が得られました。

なぜなら介護の仕事はチームワークで行うものですから「その人がどんな資格を持っているか」よりも「現場の問題をどのように解決してくれるか」のほうが求められるからです。

資格というのは本来なら能力を保証するものですが、実際には詰め込みの勉強で資格は取ったものの実際の現場に活かす視点で勉強していないことが多いのです。



例えば介護福祉士の勉強をする過程で「職業倫理」は欠かさず学ぶことになりますが、その中で書かれる「利用者本位」と「自立支援」、「プライバシーの保護」を実際の現場に活かせているかどうか。

「利用者本位を学びながら、施設の都合で利用者さんの一日を回していませんか?」
「自立支援を知っていながら、ついつい時間に追われて本人ができることまで介助していませんか?」
「プライバシーの保護が大切だとわかっていながら、礼儀を欠いて訪室時のノックや声掛けを怠ってはいませんか?」

介護福祉士という資格を持ちながら「現場で活かす学び」ができていなければ、その資格を持つことだけでは実用性がないことが見えてきますね。


現場で活かす学びを意識して資格勉強ができればよいのですが、合格という明確ならラインが引かれている以上、どうしても「答えを暗記する学び」に傾いてしまいます。

長く学校教育も答えを暗記する学びによって試験を行ってきましたから、大人になってから急に「現場で活かす学びをしよう!」と言われても戸惑うでしょう。


なので、元から現場で活かす学びで書かれているビジネス書や実用書は介護士であっても有効な学びになります。


せっかくなので、僕が読んで実際に役立ったものをいくつか紹介します。


・察しない男 説明しない女(五百田達成)


 男性脳と女性脳のちがいについて、ケースごとにまとめられています。

 介護現場はチームワーク、すなわち女性脳による水平関係で動いていますから、
 上下関係で生きる男性脳の方には「どうしてそうなるのか」への理解に役立ちます。


・マンガでよくわかるエッセンシャル思考(グレッグ・マキューン)


 「より少なく、しかしより良く」を目指す実践法。
 ここでは取り掛かりやすいマンガ版をおすすめします。


・潜在能力を最高に引き出す法 ビッグ・ポテンシャル 人を成功させ、自分の利益も最大にする5つの種(ショーン・エイカー)



 「潜在能力を最高に引き出す法」として一人の能力を高めるだけでなく、
 他者に「称賛の光」をあてることでお互いの能力を高め合う方法が書かれています。

 チームワークで利用者さんに関わる以上、「お互いを褒めて高め合う」発想と技術は
 介護士には欠かせないものと言えますね。
 

内容が気になった方はぜひ読んでみてください。
下の画像から購入ページに行くことが出来ます。

勉強する人、しない人。それぞれの意見

これまでに100人以上の介護士さんを見てきましたが、自主的に勉強をしている人は全体の2%ほどでした。3施設に1人いるかいないかです。

もちろん施設によっては月に一度勉強会が開かれていたり、介護福祉士筆記試験の正誤問題を一日一問やらせたりするところもありましたから、「それで勉強は十分」と考える人もいますので、介護士全員が勉強していないという意味ではありません。

ここで考える点は「自主的かどうか」です。


これまで出会ってきた介護士さんたちに、それとなく雑談で普段勉強しているかを確認してみると

「毎日疲れているのに勉強する暇なんてありませんよ」
「ナカさんは頭がいいから勉強してるんでしょうけど、私頭悪いんで無理です」
「勉強したって何の役にも立たないじゃないですか」
「頭でっかちになると利用者さんへの想いが固くなってしまうから嫌です」

などなど、口々に勉強しない理由を並べ立てられました。


一方勉強している人の話を聞いてみると

「今までなんで利用者さんが私の話を聞いてくれないのかわからなかったんですけど、勉強してようやくその理由がわかりました」
「最初は言われて仕方なくやったんですけど、こう、勉強したことがガチッとかみ合うと気持ちいいっすね」

といった、勉強して良かったことを次々に話してくれました。


両者の意見をまとめると「実際に勉強するのは大変だけど満足度は高い」と言えますね。

資質向上の義務

もう少し考えていきましょう。

社会福祉士及び介護福祉士法第四章第四十七条の二、資質向上の義務においてはこのように定められています。

第四十七条の二 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

社会福祉士及び介護福祉士法



介護福祉士である以上は資質向上の義務が定められていますから、介護福祉士が自己研鑽しないというのは努力義務であっても具合が悪いわけです。

改めて国家資格を持つ責任の重さを感じますね。

ただ介護士全てが介護福祉士ではありませんから、勉強する意味についてはもう少し柔らかく考えていきましょう。


介護士が勉強する意味は前項のような本人の満足度だけに留まらず、その影響は利用者さんに大きく及びます

介護士は自立支援の観点からその人が生活上苦労する部分の支援をしますから、介護士が提供するサービスの質が利用者さんの生活の質に直接かかわってきます。

こうなると介護士であっても日ごろから自己研鑽し、自身が提供できるサービスの質を向上し続ける必要性が出てきますね。

知識・技術と「人のぬくもり」

もし介護士が現状に満足して勉強する意味を感じられなかったらその人は勉強をしませんから、提供するサービスはどんどん錆びついていきます。

10年以上前に習った介護知識・技術がいまだに有効だと思い込み、経験則で「この人はこういう人だから」と決めつけ、本当なら利用者さんにふさわしくない方法で介助をしてしまうのです。


これに対して「想い」や「熱意」「共感力」から介護サービスをとらえ、「勉強して得た知識や技術だけで介護する人からは『人のぬくもり』が感じられない」といった意見を出される方もいます。

実際、知識や技術に偏った介護は「型どおりの介護」になりがちで機械的な印象を与えます。そのように扱われた利用者さんは機械的な相手に対して「自分らしさ」を出す必要性を感じなくなってしまいますから、意思という点で自立からは遠のいてしまいます


どちらも根の深い問題のように見えてきます。

知識や技術を身に付けなければ思い込みで介護をし、身に付けたとしてもそれに頼れば人らしさを失ってしまう。どう転んでも利用者さんのためにならないのなら、一体どうすればいいのかと。


その答えは至ってシンプルです。
「どっちもやればいい」と。


本来知識・技術と「人のぬくもり」は両立できます。相反するものとしてこの二つを捉えてしまうから「どちらか」を選択しようとして追い込まれるのです。

知識・技術は基礎、想いは応用

僕はこういう話をするとき、「知識や技術は基礎、想いは応用」と説明します。


数学を思い返してみるとわかりやすいですね。

数学はその数式を解くための方程式が基礎にあって、試験に出されるのはその応用問題です。基礎ができなければ応用問題は解きようがなく、数学は勉強しているかどうかがわかりやすい科目なのです。


介護もこれと同じです。
介護を適切に行うための知識や技術が基礎となり、実際に行う介助とそこから伝わる想いが応用になります。

基礎である知識や技術を学ばなければ、応用である介助は適切に行えません。その利用者さんに合った介助を行えなければ、介護士がどれだけ強い想いで介助を行ったとしても想いは伝わっていないのです。


「自分が強い想いで介護を行ったのだから、利用者さんにもその想いは伝わっている」と考えるの介護士の思い込みです。
その想いの強さゆえに相手のことが見えなくなっているのです。



実際にはその介護士さんの介助が苦痛を与えているかもしれません。
苦痛まではいかなくとも「この人、私のこと見てくれないなぁ」と思わせているかもしれません。

それらすべて、自分の思い込みではなく現実の利用者さんを見ているかによります。


それでも想いの強さを語る介護士さんは今の自分が行う介護が最適だと思い込み、そんな最適な介護を受けられる利用者さんは幸せなのだと思い込みます。

その介護士さんにとっては応用である介助ないし想いは万全なのですから、知識・技術といった基礎を固めるための勉強はしません。それどころか基礎は応用である想いを妨げるものと誤解してしまうのです。


「そんな『冷たい』介助をしたくない」と。

介護士が勉強する意味

介護士が勉強する意味を、介護士さん・利用者さんの両面からお話してきました。


介護士は資格勉強はしても、自分を成長させるための勉強はやらない傾向にあります。
それは単に介護士さん個人の問題ではなく、介護業界全体の構造からみたときに介護士にとって自己研鑽の勉強はなかなか成果が得にくいのです。

日々肉体的・精神的な重労働をこなしたうえで、さらに勉強して自分を人間的に成長させるだけの明確な理由を持ちづらいのです。


それならば資格を取って給料のベースアップに努めた方が賢明だと考えますし、それで基礎的な知識・技術を固めていけば介護士としての成長にもつながるはずです。

しかしその勉強は暗記頼りで実用性に乏しく、「資格さえあればいい」という傾向になりがちです。目的はお金であって自分の成長ではないのですから、資格を取った後はその知識や技術を更新せずに錆びつかせてしまいます。


そうして介護歴が長くなれば経験則から「想いの強さ」に価値を置くようになります。介護に必要なのは「どれだけ強い想いでもって介護できるか」であり、知識や技術は二の次だと。

こうして盲目的になってしまうと、介護士はいよいよ勉強しなくなるのです。


一方で利用者さんにとって介護士が精力的に勉強してもらえるのはありがたいことです。自分が受けられれるサービスの質が上がり、自分の生活の質も上がるのですから。

しかしそれに対して相応の報酬が払えるとは限りません
サービスの質によってサービス料が変わるわけではありませんから、質の良し悪しに関わらず払う金額は一定なのです。


では、こうした背景の中で介護士が勉強する意味はなにか。


それは介護士・利用者ともに幸せになることに他なりません。

介護士として幸せになるために

勉強する介護士が少ないのは、そもそも社会人からして半数近くが勉強しておらず、そのうえ介護全体で見ても普段から勉強するメリットが少ないからでした。

しかし利用者はもちろん、介護士自身がより良く生活していくためにもビジネス書や実用書を通じて自分を成長させることが欠かせません。


なぜなら、資格勉強ではその分野のことしか知りようがないからです。

介護の資格ばかり取っていては介護の世界しか見ることができず、今社会がどのような動きになっているか、どのような考え方・方法が出てきているのか、どれだけ進歩しているのかがわかりません。


その狭い視野から介護士が自分の人生を考えたとしても、その生き方は介護の中からしか見つけられません。

人口が先細りする中で、あと何年介護士は仕事で今の給料が得られるのでしょう?
いつまで自分の体は介護に耐えられるのでしょう?
もし結婚して家族を養う最中で生計を立てられなくなったら?

それらすべて、介護分野の見識だけでは答えを出せません。
介護以外の幅広い知識が必要になるのです。


もちろん友人知人、インターネットやマスメディアなどから情報は得られます。
しかし自分から勉強をしていなければその情報を十分に理解することができないのです。場合によっては誤った知識を身に付けて世の中を誤解してしまいます。

それは、介護士の幸せからは程遠い生き方です。


もし介護士が介護以外の知識にも明るければ、目の前の問題もいろんな角度からとらえることができます。

例えば僕が介護現場の問題を自分を成長させる勉強によって解決して信用が得られたように、見える世界が広がれば可能性も広がっていくのです。

また介護の外へ一歩足を踏み出せば、介護士が世間からどのように見られているかを知ることができます。
普段からの行いに恥じることがなければ介護士は温かく、ときに尊敬でもって迎え入れられる職業なのだと気づくでしょう。


介護業界にいては「介護ができて当たり前」なので、自分たちの仕事の価値を給料でしか判断できなくなりますが、介護士がその仕事でいただく報酬の本質は「信用」なのだと気づけば、自分を成長させる勉強にも精が出せます。


そうして自分を成長させて誰かを助ける学びの先には、自他ともに幸せになる未来があるのです。

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