介護を「辞められない」「辞めさせられない」方へ

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介護
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介護の仕事をしていると様々な理由で辞めていく方を見送ることがあります。
僕自身もこの仕事を始めてから3回転職していますし、その時々の理由も違います。

そこで今回は「入職された方が介護の仕事をすぐに辞めていく理由」についてお話していきます。

この記事を読む「すぐに辞める理由」と「辞めない・辞めさせない方法」について一つの解決策を知ることが出来ますので、ぜひ最後までご覧ください。


介護現場で見聞きした「辞めるまでの期間」

皆さんが知る中で「最短で辞めた人」の雇用期間はどれくらいでしょうか?

1~3ヶ月くらいで辞める人を見れば「短かったなぁ~」と思うでしょうし、半年~1年でも「これからだったのにねぇ…」と思うでしょう。


法律上の問題点はさておき、僕が知る中で最短で辞めていった方の期間は「3時間」でした。
午前中に軽いオリエンテーションをし、お昼の休憩時間に行方をくらましたわけですね。

担当していた上司は「『荷物取ってきます』って言ったきり帰ってこなかった」と驚きを隠せない様子で話していましたから、そのエピソードは今なおその職場で語られていることでしょう。



3時間は極端すぎるにしても、「最初のふるい」は1~3週間です。

この間で辞める人を過去5人ほど見てきましたし、その決断の早さに驚かされたものです。ただ「長く働いても本人もつらいだけだろうな」という方が多かったので、単に御縁がなかったのだと割り切れる期間ですね。

また1か月続けられれば3か月まではやり続ける傾向にありました。これは4月入職し6月退職でボーナスをもらう、という感覚なのでしょう。


半年が「大きなふるい」の時期で、ここで「もう無理だ」と辞める方を最低でも10人は見てきました。合わないながらも頑張り続けた半年を自賛して辞める方が多く、施設側はその気配に気づけず虚を突かれる形になって慌てふためく、ということが時折ありました。

逆にここを乗り越えられたら最低でも1年は働き続ける、という感じでしたね。


そして「最後のふるい」の時期は3年で、自分の生き方や職場の将来性を見つめ直して転職される方が多かったです。
3年以上働き続ける頃には自分なりのやりがいを見つけ出したり、要領よくやる方法を編み出したりして「続ける」マインドになっています。


家庭の事情などの特別な理由がない限り、おおよそこの期間ごとに辞めていきました。

そしてどの施設を見てきても「入職された方がどこまで続けられるか」について職員たちは一週間以内に予測を立て、それは多くの場合正確でした。


では、なぜ辞める期間を一週間以内に予測できるのか。それも正確に。


その理由は「利用者さんに合わせられるか」にあり、これこそ「介護の仕事を辞めていく理由」につながる話なのです。

予測ができても人を雇う理由

「入職者が辞める期間が一週間以内に正確に予測できる」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、実のところ精度を緩めれば初見で予測が立てられます。

入職しようとする方を一目見れば「あ、この人はもって3か月だな」とか「この人ならうまくやっていけそうだ」とわかるわけですね。

なぜその予測が立てられるのかと言えば「利用者さんに合わせられるか」という軸で判断しているからで、それだけ利用者さんとの相性が介護現場においては重視されるのです。


と、こんなことを書けば一つの疑問が浮かぶはずです。
「それがわかるならそもそも雇わないだろうから、辞める人を少なくできるのでは?」と。


ところがそうはいかないのです。

介護現場の人手不足は、本来であれば利用者さんに合わせられないであろう人材でも雇わなければ施設が回せないほどひっ迫しているのです。

そのうえ介護は利用者さんの生活を支える仕事ですから、「今日は人がいないからサービスを提供しません」という訳にはいきません。
たとえ一日であっても、食事も、トイレも、お風呂もさせてもらえないような事態になればその方の尊厳を深く傷つけますし、生命の危機にもつながります。


そうなると、現場を回すためには入職される方の適性に関わらず「来てくれたのなら雇おう、後はこの人が長く続くことを祈るのみ」という心境で雇わざるを得ないのです。


介護人材の不足については、公益財団法人介護労働安定センターの令和元年度「介護労働実態調査」の結果によれば、「人材不足感は依然として高い状況」にあると出ています。

介護サービスに従事する従業員の不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は全体で
65.3%(67.2%)と昨年度と比較してやや低下した。「適当」は 34.4%(32.4%)であった。

主な職種別でみると、訪問介護員の不足感はもっとも高く 81.2%、次いで介護職員は 69.7%で
あった。昨年度と比較し、介護職員を除く 6 職種において不足感が低下している状況であったが、
介護職員の不足感は年々上昇しており、訪問介護員の不足感は、平成 28 年度以降 80%を超えており、依然高い状況である。(図 1)

また、不足している理由としては、「採用が困難である」が 90.0%(89.1%)で、その原因を尋
ねたところ「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が 57.9%(56.2%)と高かった。

公益財団法人 介護労働安定センター 令和元年度「介護労働実態調査」の結果


このような状況ですから、辞める予測が立てられても人を雇うより他ないわけですね。


しかし合わない人を雇って仕事をさせているわけですから、当然そのひずみは雇われた当人に重くのしかかります。

職員さんに丁寧に指導されてサポートもされているのに、どうしてか仕事がうまくいかない。
日に日に「この人は仕事ができない人だ」という目で見られているような気がしてくる。
利用者さんはいつも怒ってばかりで、ひどい言葉や時には暴力をふるってくる…。

このような事態になれば自分の身を守るために一刻も早く辞めたいと考えるのは当然ですし、すみやかに退職を願い出るほうが健全です。


入職された方が介護の仕事をすぐに辞める理由は「手厚くサポートされながら合わない仕事をやり続ける中で徐々にいたたまれなくなるから」なのです。

それでも辞めさせたくないのなら ~雇う側の解決策~

入職された方が介護の仕事をすぐに辞める理由がわかっても、すでに働いている方やこれから雇う方には「そうは言っても…」という話です。


前回の記事「施設の雰囲気が暗いのはパソコンがないせいだった?!」でも触れましたが、職場に潜む理不尽を一つひとつ解決していくことが誰にとっても望まれる施設になる道筋なのです。

であれば、この「介護との相性が合わないまま雇う・雇われる」問題についても解決していくことが望ましいと考えられますし、雇う側・雇われる側どちらにも解決策はあります。


まず雇う側の解決策は「利用者さんとの相性を高めるためにどのように教えていくか」という教育システムの改善にあります。

その為には利用者さんの情報を「有機的な情報(利用者さんのもつ個々の特徴同士がが深く結びついて利用者さん全体として形作られる)」と捉え、変化する心身の状況に合わせた介護手法を教育していくことが求められます。

それはアセスメントシートや支援記録といった「無機的な情報」とは真逆で、「いま、その利用者さんがどうなのか」という生きた情報を指します。

そしてその情報は現場にいる職員さんが日々仕事をしていく中で自動的に積み重ねていますから、そういった情報をこまめに共有していくと「いま、どのようなアプローチが望ましいか」が見えてきます。


以前の記事「他業種から介護職に移った方が陥りやすい『マニュアルの罠』」でお伝えした通り、マニュアル通りの介護技術を伝えるだけでは「その人」へアプローチが出来ません。

利用者さんとの相性を高めたいのであれば、まず「その人」がどういう人で、何を感じていて、どうして欲しいのかといった有機的な情報を過度にならない程度に伝えて入職された方のアプローチが届きやすいような導線を引くことが大切なのです。

それでも辞められないのなら ~雇われる側の解決策~

一方、雇われる側の解決策は「自分の価値観(常識)を疑う習慣」を身に付けるところにあります。

新しく介護分野に入る方であっても他事業所から転職された方でも、それまでの人生で培ってきたものが知らず知らずに自分の価値観(常識)として息づいています。そしてその常識が利用者さんとの相性を高めるにあたって妨げとなる可能性が高いのです。


例えば「規則に従うのが正しい」という価値観で仕事をする職員さんは、消灯時間になっても部屋の明かりをつけてテレビを見る利用者さんに対し「もう寝る時間ですから電気を消しますよ」と一方的に消灯してしまいます。

すると勝手に電気を消された利用者さんは当然怒り出しますが、自分の価値観を疑えない職員さんは「決まりに従わないあなたが悪い」という姿勢で利用者さんに「言うことを聞かせる」対応をしてしまいます。

こんなことをしてしまえば利用者さんはその職員さんを信用できなくなりますから、次第にその職員さんの介助を拒むようになります。介助を拒まれてしまっては施設の収益にはなりませんから、長引けばその職員さんは居場所を失ってしまいます。


「いや、さすがにそれは極端な例でしょ」と思われるかもしれませんが、僕が見てきたどの施設でもこの流れは確実にあって、利用者さんから信用されない職員は短い期間で退職を余儀なくされます。

それほど「利用者さんに合わせる」ことは大切であり、その為に自分が今持っている価値観(常識)を「はたして本当に正しいと言えるのか?」と疑える習慣を持つことが求められるのです。


そうして初めて「利用者さんの価値観」を受け入れる余白が生まれ、利用者さんは自分を受け入れてくれた介護士さんを信頼するようになるのです。

介助が受け入れられるようになると仕事が楽しくなっていきますし、周りからの評価も変わってきます。なぜなら自分の仕事ができるようになることで周りの負担が減り、他の職員さんたちにも余裕が生まれるからです。


一度この循環が生まれればお互いを支えられるようになり、必要とされていることを実感できます。そうなれば仕事に対してやりがいを感じられるようになりますから、「辞められない」どころか「辞めたくない」と思えるようになるのです。


この流れを生み出すべく自分の価値観を疑うためには「自分と向き合うこと」が欠かせず、その為の手法は以前の記事「僕は自己分析で『メモの魔力』のメモ術をお勧めする」や「介護士と自己分析 ~みんなで幸せになるために~」でお話しした通りですので、ぜひ読んでみてください。


紀伊國屋書店限定で「前田裕二『メモの魔力』モデル MOLESKINE クラシック ノートブック & ジェットストリーム ピュアモルト 4&1」も販売されています。

販売ページ:紀伊国屋書店


『メモの魔力』モデルの元となったノートやボールペンも紹介します。

まとめ ~お互いを緩やかに受け入れる仕組みを~

いかがでしたでしょうか。

「入職された方が介護の仕事をすぐに辞めていく理由」を雇う側・雇われる側の両面で見ていくと、より具体的な状況が見えてきたかと思います。

そして具体的な状況が見えるからこそ解決策もまた見えてきて、雇う側・雇われる側ともに気持ちよく仕事を続けられる道筋が作られていきます。


冒頭でお話しした通り、僕はこれまでに3回転職しています。
すべて介護分野の中で、その都度派遣社員だったり正規職員だったり契約社員だったりと様々でした。

どのタイミングでも「雇う側の事情」と「雇われる側の価値観」がすれ違い、悲しい結果になっていく様子を眺めていくことになりました。

そして僕自身もその波に巻き込まれ、神経をすり減らして仕事を無理やり続けた結果、ストレス過多となって心臓を傷めて倒れました。


雇う側にも事情があります。
雇われる側にもそれまで培ってきた価値観があります。

そのどちらも否定せず、お互いを緩やかに受け入れられる仕組みがあればどんなに幸せなのか。
そう思って解決策を考え続けた結果、今回の内容に落ち着きました。


介護現場は今日も人手が足りませんし、御縁があって介護分野に就職された方を誰もが受け入れたいと願っています。

それでも「なぜ人がすぐに辞めていくか」の理由について深堀できるほどの余裕がなく、日々の業務に追われる職員さんたちは入職された方に「すぐに育ってほしい」と期待してしまうのです。


「自分たちもそのプレッシャーの中で仕事ができるようになったから、あなたにもできるはずだ」


自分たちが働く背中を見せ、どうか付いてきて欲しいと祈りながら。


最初は誰もが優しい。

でももしその優しさが次第になくなっていったのなら、そこにはやむに已まれぬ事情と価値観の変化を求められる現状があるのです。


そのとき一歩前に進むのか、別の道を探すのか。
その答えは自分の心だけが知っているのです。


【併せて読みたい記事】
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