「福祉を欠いた介護職」が招く介護の未来

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介護
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2022年1月13日、「訪問先で窃盗 介護士を書類送検 専門家は「氷山の一角」と指摘(Yahoo!Japanニュース)とのニュースが上がりました。

ニュースによれば、重度の身体障害を抱える男性利用者宅から食べ物や洗剤等十点、2000円相当を盗んだとして50代女性介護士が書類送検されたとのこと。


今回はこの事件から見える「福祉を欠いた介護職が招く介護の未来」について

①事件に対して思うこと
②介護は福祉の「一手段」
③福祉を欠いた介護職がどのような未来を招くか

以上3点のお話をしていきます。

事件に対して思うこと

事件の詳細は先の記事を読んでいただくとして、思うことは


「今の介護職には『福祉』が欠けている」


これに尽きます。


人の「しあわせ」や「ゆたかさ」を実践すべき介護士が訪問先の利用者宅で盗みを働くとは言語道断です。

ニュース動画を見る限り、ためらいなく家のものを自分のバッグに入れていることから常習犯であり、「共感力」「想像力」を著しく欠いていることが窺われます。


普通に考えれば

「自宅の食べ物や洗剤などを、身動きが取れない自分の特性を逆手に取って堂々と盗む」

という行為にどれだけ怒り、悲しみ、自尊心が傷つけられるかは簡単にわかるはずです。

にも関わらずそれを「ためらいもなくやる」のは、相手への心配りなど微塵もなく「いかに自分が得をするか」しか頭にない証拠と言えます。


であれば普段の介助も一方的・独善的であろうことは容易に予想がつき、こうした介護士の介助を甘んじて受けざるを得なかった男性利用者やその家族の心情は察するに余りあることです。


こうした「相手の気持ちを察せられない、考えようとしない」介護職がいるだけで「しあわせ」でもなければ「ゆたか」にもなっていない以上福祉とは真逆であり、介護職として存在が矛盾しています。


ところが、実際に盗みを働くような介護職は稀だとしても「存在が矛盾している」介護職は案外多くいるものです。

介護は福祉の「一手段」

たとえば「今の介護職には『福祉』が欠けている」と指摘されても、多くの介護士さんは

「意味がわからない」
「福祉で飯が食えるか」
「(現実がわかっていない)キラキラ系介護士か」

といった反応を示しますし、こうした反応こそが「介護職として存在が矛盾している」証拠となります。

それは「福祉の定義」から見れば明らかです。

福祉( Welfare)とは「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福と社会的援助を提供するという理念を表す。

福祉 ーWikipediaー

ソーシャルサポート(社会的援助)とは、周囲の人々から与えられる物質的・心理的支援の総称である。人間は不快な出来事があるとストレスを受けるが、ソーシャルサポートは間接的にストレス反応を低減させる効果がある。

ソーシャルサポート ーWikipediaー

社会福祉(social-welfare)とは、狭義には基本的人権(特に生存権)の保障の観点から生活困窮者の生活保障や心身に障害等があり支援や介助を必要とする人への援助を行う公的サービスをいう。また広義には全国民を対象に一般的な生活問題の解決を目指す取り組みをまとめて社会福祉という。

福祉 ーWikipediaー


こうして定義を見れば、

公的サービス(福祉)である社会的援助の一手段として「介護保険制度による介護」

があり、多くの介護士さんは「福祉」の一環として介護の仕事をしていることがわかります。


であれば、介護の仕事をする以上は「福祉」をしているのであって、「福祉の意味がわからない」とか「福祉で飯が食えるか」「(現実がわかっていない)キラキラ系介護士か」という反応全てが「介護職として矛盾する行為」だと言える訳ですね。

介護職の「盗み」は起こり得ない?

とはいえ、普段から介護の仕事で「福祉」を意識するのは稀です。

仕事でまず求められるのは介護報酬をもたらす食事や排せつ、入浴などの「介助」であって、利用者の尊厳を守ったりや自立を促したりような「介護」ではないのですから、「福祉の意味がわからない」等の反応も「よくあること」と言えます。


これが「存在が矛盾する介護職が案外多い」背景となります。


多くの介護士さんはお金をもらうために「介助」をしているのであって、福祉の実現のために「介護」をしているわけではないのですから、お金をもらうために「介助」するよりも「窃盗」する方が楽で効率が良ければそちらを選ぶ人も出てきてもなんら不思議ではありません。


実際僕が15年介護・福祉の現場で働く中で二度、お金絡みの案件がありました。

一つはクレジットカードを盗まれ、もう一つは利用者さんの財布からお金だけ抜き取られました。加えてどちらも犯人が見つからず、しかし施錠などの関係から内部の人間しか実行犯になれない状況でした。

どちらも半年ほどで数名の介護職員が退職する運びとなりましたが、その中に犯人がいたかは(警察が介入していないこともあり)不明です。


こうしたことは表に出ないだけであって、思っている以上に起こりうることです。

そしてこんなことが起きる根本的な問題は、相手と共にある「しあわせ」や相手を思いやる「ゆたかさ」といった『福祉』を欠いた介護職と、そうした介護職を生み出す社会の価値観にあるのだと見ています。

「福祉を欠いた介護職」が招く介護の未来

一部の介護職によって社会全体の介護へのイメージが悪くなるのは、人手不足を嘆く介護・福祉業界全体にとって致命的なダメージとなります。


介護職の働く環境が4K(きつい、危険、汚い、給料が安い)と言われる中で今回のような事件が世間に知れ渡れば、「介護だけは絶対にやりたくない」と誰しもが思うようになるでしょう。

大切な自分の子どもに「貧しさ」を経験させたい親はいませんし、子どもも明るく楽しい職業がいくらでもある中で「介護」を選ぶ理由を見出せません。

加えて介護・福祉業界は構造上「介護をする」ことでは豊かになれないようになっていますから、「尊さ」くらいでしか選ばれようにないのです。


だからこそ、介護士が事件を起こすのは罪深い。


唯一介護・福祉業界を選ぶ理由になるであろう「尊さ」を介護職自らが汚して人手不足を加速させてしまうわけですから。


また今回のニュースを見れば

「やはり人(の介護)は信用できない」
「人よりもロボットに(介護を)やってもらったほうが安心だ」

という人は増えるでしょうし、社会もそうしたニーズに合わせて科学的介護を提供し「人を必要としない社会」を創り出していきます。


その未来が訪れるとき、介護歴の長い介護職ほど「介護を奪われたあとの仕事」を見つけ出せずに苦労することになります。

その頃には他の業界でも同じような「人よりもロボット」の流れが起き、多くの仕事が「人を必要としない仕事」に置き換わっているからです。


このように「福祉を欠いた介護職」が招く介護の未来とは『自滅』です。

まとめ 〜介護職は孤独を救う〜

「人を必要としない社会」を多くの人が望み、福祉を欠いた介護職もまたその一翼を担うのであれば、その先にあるのは『孤独』です。


介護現場をはじめ社会は「人」を必要とせず、行き場を無くした人は常に「科学」の監視下に置かれて管理されるようになります。

このとき「人よりもロボット」を望んだ「人」自身の望みが社会から人を排除することになり、介護職に限らず現代人もまた自ら孤独の道を歩もうとしている、と言えます。


そうした社会で介護職として生き残るのは「人」にアプローチできる人材で、「福祉」という人の「しあわせ」「ゆたかさ」を支えられる介護職こそ人から求められるようになります。

その頃には人は今よりも更に深刻な『孤独』と向き合わされるようになっているでしょうから、「人として関わる価値」が上がっているでしょう。


多くの人は「人生の最期に迎える『孤独』」を甘く見積もっています。

体が動くうちは「まだなんとかなる」という希望がありますが、体が動かせなくなるにつれてその希望は「誰かになんとかしてもらわないといけないもの」へと変わっていきます。


その誰かが「人」ではなく「ロボット(テクノロジー)」だったとき。


同じ生命なら感じるであろう「死への不安」を持たないロボットがどれだけ「最適解」を示したところで「他人事」にしかなりません。

このとき「指し示された『最適解』にあなたが合うかどうか」が問われるのみであって、ただでさえ差し迫る死への恐怖で冷静ではいられないのに、その感情に寄り添ってもらえないというのはあまりに過酷だと思います。


「人を必要としない社会を自ら招いた結果、人生の終盤で人に寄り添ってもらいたいと思うのを『自業自得』で片付けられるのか」

多くの人が遅かれ早かれこの問いと向き合うことになるでしょう。


そうした未来を見据えれば、今「福祉」を大切にすることが誰にとっても死活問題なのがわかるかと思います。

介護職が福祉を欠けば自滅の道を歩むことに。

また今後ロボット等のテクノロジーによって「人を必要としない社会」が訪れたとき、人はこれまでにない『孤独』と向き合わされる。

そのとき『孤独』から人々を救えるのは「福祉を実践する介護職」となる。


【併せて読みたい記事】
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