【体験レポート】福祉カフェが生む多様性と『ヒト』の価値

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介護
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ここ数ヶ月で名古屋市内にある「障がいのある方が働くカフェ」、いわゆる『福祉カフェ』を回りました。
どのカフェも素敵な店構えや丁寧な対応をされており、充実した時間を過ごせました。


そこで今回は福祉カフェに行った感想や、そこで学んだことをお話ししていきます。


福祉カフェのもたらす多様性や、その先に生み出されるコミュニティ。その背景にある新たな価値観がこれからの福祉、あるいは社会そのものを変えていく予感を受け取ってもらえたら幸いです。


福祉カフェの特徴

まず福祉カフェとは何かを知るために、福祉カフェの特徴を挙げていきます。

①雇用機会の提供があり、障がいを持つ人たちが仕事を通じて自己成長や社会参加を実現できる場となる。

②バリアフリーな環境やトレーニングを通じて、彼ら彼女らが安心して業務に取り組めるようなサポートが提供される。

社会的な理解と共感を促進し、地域全体で障害者雇用の重要性を浸透させる役割がある。



こうした特徴を持ち、障がいのある方が店員さんとして実際に働いたり、商品制作に関わっていたりするのが福祉カフェと言えます。


福祉カフェがもたらす多様性

自分の住む地域に福祉カフェがあることで、障がいのある方々の「働く場」が生まれて地域全体に多様性が育まれていきます

多様性(たようせい、英: diversity)とは、「ある集団の中に異なる特徴•特性を持つ人がともに存在する」ことである。

Wikipedia



多様性が育まれることでもたらされるメリットは、『みんな』が「わからない不安」から解放されて心身ともに自由になることです。


例えば障がいのある方が普段どのように生活されているか、情報としてぼんやり知っていたとしても、実際どうなのかは直接会ってみないとわかりません。


小さな段差ひとつ、なだらかな坂ひとつ、部屋の明るさ・暗さなど。


五体満足に生きる私たちが無意識でやり過ごせる小さな要素が、障がいのある方にとって大きなハードルとなって立ち塞がる場面が今もそこかしこで起きているのです。


そしてそのハードルが彼ら彼女らの「生きづらさ」となり、身近に支える人々の生活にも大きな影を残していきます

あなたの職場にいる「あたりの強い人」や忙しなく通りすぎる通行人など、余裕のない人の背景にはそうした『影』が伸びているのかもしれませんし、現実的に「ヤングケアラー」や「介護離職」といった直接的な課題も昨今ニュースに取り上げられています




それら全て、「わからない不安」から発生しています。

一人ひとりが「知る」ことで相手への理解を深め、お互いに支え合うことでそうした生きづらさが「わかる」ようになり、一つずつ解消できるようになります。

そして障害者福祉においてはその「知る」機会を緩やかに、お互いにメリットのある形で提供できる形態の一つが『福祉カフェ』になるのです。


それでは、実際に赴いた福祉カフェについてお話ししていきます。


ヨナカフェ


いっぱいの ときを わかちあう」をテーマに、指定生活介護事業所ヨナワールド内にて障害者の方たちが制作する雑貨やケーキを楽しめます。

おすすめは豆から挽いたホットコーヒー
時間帯が合えば、障がいのある方にコーヒーを運んでもらえます。


営業時間:10:00~15:30(水曜のみ10:00~14:30)
定休日:土日祝
場所:愛知県名古屋市中区栄5-21-9

ヨナカフェHP:http://cafe.yonaworld.net/
ヨナワールドHP:http://yonaworld.net/

カフェmagnet

たくさんの人から愛されて集う場所」として、白いモンブランとランチが有名なカフェ。障がいのある方の中でも軽度の方が働かれており、「障がい」という言葉が持つ垣根を感じさせない雰囲気のお店。

おすすめはランチメニューにある唐揚げ
油が軽く、雑穀米ご飯との相性が良くて食が進みます。味噌汁も味わい深い。


営業時間:カフェタイム 10:30~17:00(ラストオーダー16:00)
     ランチタイム 11:00~14:00
     バータイム 18:00~22:00(完全事前予約制)
定休日:毎週水曜日
場所:愛知県名古屋市瑞穂区苗代町26-5

HP:https://mirasen.org/cafe-magnet/
Instagram:https://www.instagram.com/magnet_horita?igsh=Yzh4YXJmcnpsY2Vu

ひょうたんカフェ

障がいをもつ方々を中心として、地域のさまざまな人たちが出会い交流する中で、お互いを認め合い、人とつながりあう喜びを感じられる社会づくりに寄与する」ことを目的として、障がいのある方々が制作したおからドーナツや雑貨を販売。

おすすめはおからドーナツ。多数種類があり、持ち帰りでもオープンデッキでも召し上がれます。
また雑貨品は手作りで、色合いや形に人柄が感じられます。


営業時間:10:00~16:30
定休日:土日祝
場所:愛知県名古屋市中村区砂田町2丁目15

HP:https://hyoutan-cafe.jp/
YouTube:https://youtube.com/@hyoutan-cafe?si=Z3K_hcE7C_6tSV4T

カフェの共通点と違い


どのカフェにも共通していたこととして

①障がいのある方が「作ったもの」を販売している

②障がいのある方が一部でも「当事者」として参加している

職員さんが自分の仕事に『意味』を見出し、積極的に商品を売り込んだり障がいのある方とお客さんの間を取り持ったりする。

④Instagram等SNSを運営している



といったものが挙げられます。


しかし、同じ福祉カフェでも価格設定には違いが見られました。

「ヨナカフェ」ではアイスコーヒーが250円であるのに対し、「店員が気まぐれなカフェドモア」では400円。カフェmagnetでは500円となっています。

これはヨナカフェが生活介護であり、残り二者が就労支援であることから「お金の使い方」が異なる為だと推測できます。


ヨナカフェが中度の障がいのある方に「働く体験」を通じて人としての成長をもたらすのに対し、残り二者は軽度の障がいのある方が実際に働くことを目的としているからこそ、他のカフェと変わらず「働いて稼ぐ」ような値段設定にしてある訳ですね。

そこには「障がいの程度」による経営戦略の違いが現れており、

・値段を安くして集客力を高める

・値段を他と同じにして「働ける力」を身につける



といった現実的な視点から値段設定がされている、と言えます。

「障がい」を「人が支えたくなる価値」へ

当事者や福祉従事者にとって、これまで「障がい」とは「生きづらさ」ばかりに焦点を当てられてきました。

「できない・やれない」などの『ない』ことが人生の命題であって、それを解消する手立てを社会に求める、あるいは創ることが主だったのです。


しかしインターネットやスマートフォンの普及によりSNSが誰にでも扱えるようになった結果、その「生きづらさ」に別の側面が加えられることとなったのです。


それは純粋な『命の輝き』であり、「応援される理由」です。


彼ら彼女らが喜怒哀楽のままに生き、お互いに支え合い、その姿が見る人への生きる活力へとつながっていく「元気になる」ことに付加価値が生まれ、これまでマイナスイメージに囚われていた「障がい」にプラスイメージが加えられたのです。



ところが、そうした『新しい価値観』を社会はまだ知らずにいます。

未だに「お金儲け=悪」と思い込んでいる方も見受けられますし、障がい者を「社会的弱者」とみなして低賃金で雇う会社も多いのです。


それは福祉現場でも大差なく、「障がいがある(=そこに報酬が設定されている)」から支援しているのであって、仕事でなければ福祉に携わらない福祉従事者も少なからずいるでしょう。


つまり社会は未だに『障がい(コト)』とは向き合っているものの『障がいのある方(ヒト)』とは十分向き合えていないのが現状です。

それは「障がい」に対して支援はするけれど「障がい者」に対して福祉はしない(していると思い込んでいる)、ということです。





令和の時代でも、まだどこかで障がいのある方に対して「日常生活を過ごせるだけで幸せだろう」という感覚があったり、「(お金がもらえるから)してあげる」といった姿勢が残っています。

そしてそれは、その支援を受ける『ヒト』の人生について改善を考えない「思い込み支援」へと繋がっていきます。


そうした思い込み支援は『無知(自分が「知らない」ことを知らない)』と『無理(自分が「やれる」ことを知らない)』から生まれており、結果として「仕方ない」の一言で障がいのある方の人生を閉ざしていくのです。


その「仕方ない」で済ませてしまった『障がいのある方(ヒト)』が「ありのまま」でいること。それが彼ら彼女らの生きる力だと気づいたとき、「人のしあわせ、ゆたかさ」たる『福祉』の真の実践が始まる。そう思えてならないのです。

ヒトの価値が高まる

「障がいがある方(ヒト)」の価値が高まっている事実があります。


「ひょうたんカフェ」ではおからドーナツが250円、キャラメルラスクが360円、手芸品に至っては1,500〜10,000円以上するものもあります。



おからドーナツにしても、アイスコーヒーにしても、一般的な美味しさです。それでもその値段で定期的に売れるのは、その商品の背景に「働く障がい者(ヒト)」の姿が見えるからです。

それもただ見えるのではなく、Instagramや Facebook、YouTubeなどの媒体を駆使してよりリアルに、生活感あふれる形で「見れる」ように工夫しているのです。



これらのメディアをただ「情報発信媒体」として使うのではなく、きちんと「収益」に向かわせる為BASEにてオンライン販売しています。

この仕組みを取り入れることによって

・Instagram等のSNSで「障がいのある方」の『ファン』を作る

Instagram,Facebook,YouTubeのどこからアクセスしても「オンラインショップ」にたどり着けるように導線を引き、ファンに買ってもらう

ファンの中から「スタッフ」や「ボランティア」を募る



といった流れが生まれます。


そしてこの流れは彼ら彼女らに「障がい」があるからこそ生まれるものであり、ヒトの価値が高まっている証拠でもあるのです。

【まとめ】福祉カフェがヒトを救う

今回は実際に訪れた名古屋市内にある福祉カフェの紹介と、福祉カフェから学んだことについてお話ししてきました。


ヨナカフェでは豆で挽いたコーヒーを一滴もこぼさず見事に運んでくださったことに感動し、カフェmagnetでは洗練された接客に圧倒されました。

また、ひょうたんカフェの実践は西野亮廣さんの著書「夢と金」について解説した記事でお伝えした『機能』と『意味』につながっていると感じました。





福祉カフェがもたらす多様性や、生み出される「人が支えたくなる価値」はこれからの福祉実践を考える上で大きな位置を占めることになると考えられます。

なぜなら今の時代は「自分と他人が分けられない時代」である上に、日本はこれから人口減少の一途をたどり、コミュニティ単位で自分の生活圏を守っていく必要があるからです。


厚生労働省 我が国の人口について|https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html




『ヒト』が徐々に減る一方、『コト(テクノロジー、システムなど)』や『モノ(環境設備、ガジェットなど)』は補うように充実していきます。人が側にいなくても生活は成り立つものの、それは裏返せば『ヒト』がいない孤独な社会に向かっている、ということになります。

2020年に1億2000万人だった人口が50年のうちに8700万人にまで減少する予測、そして2025年には人口層の厚い団塊の世代が後期高齢者に入り、「人がいなくなる」事態はいよいよ国難となっていきます。





等しく人口が減少する日本の中で、障がいのある方々がどのように生活していくか。
彼ら彼女らを支える人手をどこから導くのか。

高齢者分野もまた人手がいない中で、何をきっかけに障害者福祉へ参入するのか。
参入して定年まで勤め上げた後、老いた福祉従事者を支えるのは誰か。


これらの課題を解決するのが複数コミュニティの連携であり、施設が土地に紐づく以上は地域コミュニティへの関与・貢献は喫緊の課題と言えます。


だからこそ「自分がどれだけのコミュニティに所属しているか」が重要となり、障がいのある方々がコミュニティに参加する、あるいはコミュニティを創る時には彼ら彼女らが生まれながらに持つ「人が支えたくなる価値」が欠かせないのです。

そしてそのコミュニティを支える福祉従事者も障がいのある方々を支える「ファン」から正当な評価を受け、「やりがい」や「生き甲斐」を見出せるようになります。


福祉カフェにはそれだけの可能性が秘められていて。
人が人を好きでいられるうちはやり方ひとつ、伝え方一つでこれからの社会を豊かに、幸せに生きられる。

そう、思えてならないのです。



介護ブログの他にも、介護ニュース等などを取り上げるnote、読書にまつわるアメーバブログを運営しております。



また僕が介護を考えるうえで参考になった書籍を紹介しますので、よかったら一度読んでみてください。


本からの学びは揺るぎない自信へとつながっていきます。

介護を自分の「感情」頼りにするのではなく、知識や経験に裏付けられた「事実」と併せて行うことで、介護はすべての人を豊かにしていくことができるのです。


一緒に学んでいきましょう。

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