これまでのシリーズでは、『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著)の考え方をもとに
「①家計改善」で固定費の見直しを
「②お金を育てる」で新NISA・iDeCoを
「③自分で稼ぐ力」で処遇改善加算や資格取得についてお伝えしてきました。
節約して、種をまいて、収入を伸ばす努力もする。ここまで頑張ってきたあなたに、今回は少し違う角度からの問いを投げかけたいと思います。
それは、「そうして得たお金を、あなたはちゃんと自分のために使えていますか?」という問いです。
この記事では、『お金の大学』が説く「使う力」の考え方をもとに、介護福祉士として15年以上現場に携わってきた経験を交えながら、心を満たすお金の使い方についてお伝えします。
今回の記事を読むことで
- なぜ「貯める・増やす・稼ぐ」だけでは、豊かな人生にたどり着けないのか
- 自分の支出を「消費・浪費・投資」に仕分ける考え方
- 罪悪感なく、自分にお金を使うための考え方
- 「時間を買う」という、介護職にこそ必要な発想
- 誰かのためにお金を使うことが、なぜ幸福感につながるのか
これらの内容がわかり、「お金を使うことへの罪悪感」が「自分を大切にするための、意味のある使い方」という感覚に変わるきっかけになれば嬉しいです。
※本記事は『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著/朝日新聞出版)の考え方を参考に、介護・福祉職向けの視点を加えて構成しています。
なぜ、貯めるだけでは豊かになれないのか
『お金の大学』では、経済的に自由になったからといって必ずしも幸せになるとは限らないと述べられています。実際、お金を貯めることだけを目的にしてしまうと、いざ自由な状態を手に入れたときにそのお金をどう使えばよいのかわからず、かえって虚無感を覚えてしまう人も少なくないといいます。
これまでのシリーズで、固定費を見直し、新NISAで種をまき、資格や処遇改善加算で収入を伸ばす努力をお伝えしてきました。しかし、これらはすべて「お金を貯める・増やす」ための力です。その先にある「何のために貯めるのか」という問いに向き合うのが、5つ目の力である「使う力」です。
「死ぬときに一番お金を持っていても仕方がない」という考え方があります。そして図らずも、その考え方は介護現場で働く介護職の皆さんが一番身近に感じているはずです。居室に豪華な家具が置かれても、定期的に家族から高級な菓子等が届けられても、自分の心身がままならず独りで窓から外を眺める様は「お金に使い方」を意識せずにはいられません。
頑張って働き、頑張って節約してきたからこそ、そのお金を意味のある形で使う力もまた、しっかりと鍛えておく必要があるのです。

支出を仕分ける――消費・浪費・投資という3つの視点
「使う力」を鍛える第一歩は、自分が普段何にお金を使っているのかを3つに仕分けてみることです。
- 消費:家賃や食費、光熱費など、生活に必要な支出
- 浪費:なんとなく続けているサブスクや、衝動買いなど、満足感につながっていない支出
- 投資:資格取得や読書、あるいは大切な人と過ごす時間など、将来の自分や人生にリターンをもたらす支出
大切なのは、支出の総額を無理に減らすことではなく「お金の使い道の質」を上げていくという発想です。
同じ金額を使うのであれば、満足感につながらない「浪費」を減らし、自分の人生を豊かにする「投資」や、本当に価値を感じる支出に振り分けていく。この意識の持ち方こそが、「使う力」の土台になります。
一度、直近1ヶ月の家計簿やクレジットカードの明細を見返して、それぞれの支出がこの3つのどれに当てはまるか仕分けてみてください。「なんとなく」使っていたお金の正体が、はっきりと見えてくるはずです。

また、家計を見直すにあたり、「消費」「浪費」「投資」に分けて固定費をレビューできる無料アプリを作りました。
自分で項目を追加できる他、PDF出力による印刷も可能ですので、使う力を鍛える練習としてご活用ください。


「消費」には、目安となる黄金比がある
3つの中でも、まず土台として押さえておきたいのが「消費」です。
家計管理の考え方の一つに、「家計の黄金比」と呼ばれる目安があります。手取り収入に対して、「必要なもの(消費)」に50%、「欲しいもの(浪費)」に30%、「貯蓄・投資」に20%を振り分けるという比率です。
たとえば手取り15万円であれば、消費にあてる目安はおよそ7万5,000円、浪費に4万5,000円、貯蓄・投資に3万円という計算になります。もちろんこれはあくまで目安であり、住んでいる地域や家族構成によって最適な比率は変わってきますが、「自分の消費は、この目安と比べて多いのか少ないのか」を知るだけでも、家計の現在地がはっきり見えてきます。
一人暮らしの場合、特に住居費の割合が大きくなりやすい傾向があります。都市部では、消費支出のうち住居費だけで50%近くを占めてしまうケースも珍しくありません。もし住居費が黄金比の目安を大きく超えているようであれば、シリーズ①でお伝えした固定費の見直しの中でも、住まいの見直しを優先的に検討する価値があります。

自分にお金を使うということ――自己投資という選択
前回の「稼ぐ力」の記事でお伝えした資格取得や研修参加も、実は「使う力」と深く結びついています。
資格取得のための受講料や、専門書の購入費用、勉強会への参加費。これらは一見支出のように見えますが、その知識や資格が将来の給料や仕事へのやりがいという形でリターンをもたらしてくれるのであれば、それは立派な「投資」です。
介護・福祉職は、日々の忙しさの中で、自分自身の学びや成長に時間とお金を使うことを、つい後回しにしてしまいがちです。しかし、自分の知識や好奇心にお金を使うことは、結果として仕事を通じて社会に価値を届けることにもつながっていきます。
「今の自分に、まず必要な投資は何か」を時々立ち止まって考えてみることには、価値があります。

罪悪感なく、「豊かな浪費」を楽しむ
一方で、すべての支出を「投資」にする必要はありません。『お金の大学』では、自分にとって心から価値のあることにお金を使う「豊かな浪費」もまた、人生を豊かにする大切な使い方だとされています。
介護の仕事は心身に負担がかかりやすい仕事です。頑張った自分への、ちょっとしたご褒美にお金を使うことは、決して悪いことではありません。大切なのは、「なんとなく」ではなく、「これは自分にとって、本当に価値のある使い方だ」と自覚した上で使うことです。
同じ金額を使うにしても、罪悪感を抱えながら使うのと納得して使うのとでは、得られる満足感がまったく違います。あらかじめ「今月はこのくらいまで、自分の楽しみのために使っていい」という枠を決めておくと、罪悪感なく心から楽しむことができます。

介護職にこそ必要な、「時間を買う」という発想
『お金の大学』が挙げる使い方の一つに「時間を買う」という考え方があります。これは家事代行や時短家電、外食などにお金を使うことで、自分の自由な時間を生み出すという発想です。
シフト制で働き、体力を使う介護の仕事をしながら、家に帰れば家事や家族の世話も待っている。そんな毎日を送っている方にとってこの「時間を買う」という発想は、特に大切にしてほしい考え方です。
以前の記事で、仕事と介護の両立という重いテーマにも触れましたが、限られた時間の中で全てを完璧にこなそうとすると、心も体も疲弊してしまいます。
食器洗いを食洗機に任せる、疲れた日は無理に自炊せず惣菜や宅配を頼る、月に一度だけ家事代行を利用してみる。こうした選択は贅沢ではなく、自分の心と体を守るための、意味のある投資です。
浮いた時間を、趣味に使ってもいいですし、ただゆっくり休むために使ってもいい。時間は、失ってしまうと取り戻すことができません。お金で時間を生み出せる場面があるのなら、それは十分に価値のある使い方だといえます。

誰かのためにお金を使うということ
最後にご紹介したいのが寄付やプレゼントといった、他者や社会とのつながりを感じられるお金の使い方です。
人は自分だけのためにお金を使うよりも、誰かとのつながりを実感できたときにより深い幸福感を得られるといわれています。家族へのちょっとしたプレゼント、お世話になった人への感謝を込めた贈り物、あるいは関心のある分野への少額の寄付。こうした使い方も、人生を豊かにする「使う力」の一つの形です。
実際に私自身、お金の大学の5つの力を見直した後、クラウドファンディングや寄付で他者のためにお金を使いました。その中で
2020年の「障がい者の方も作れるハンドメイドキャンドルを広めたい!」
2022年の「障がいのある方やご家族の居場所、社会に繋がる架け橋に!キャンドルカフェOPEN」
というプロジェクトを支援した後、2023年夏のマルシェ出店にてプロジェクトオーナーの方と偶然お会いしました。その縁がきっかけとなり翌月にはカフェでキャンドル作りを学び、キャンドルアーティストとして月のミツロウキャンドルを販売することになりました。
介護の仕事そのものが誰かの人生に寄り添う仕事です。その延長として、お金の使い方にも「誰かとのつながり」という視点を取り入れてみると、日々の生活に新しい豊かさが加わるかもしれません。

まとめ――お金を貯めた先に、あなたは何を見たいですか?
「貯める力」「増やす力」「稼ぐ力」で積み上げてきたものはそれ自体が目的ではありません。その先にある、豊かな人生のための手段です。
自分の支出を消費・浪費・投資に仕分けてみること。
自己投資に罪悪感なくお金を使うこと。
時には豊かな浪費を楽しみ、時間を買うことで自分を守ること。
そして、誰かとのつながりのためにお金を使うこと。
これらはどれも、これまでシリーズで積み上げてきた土台があるからこそ心から楽しめる使い方です。頑張って働き、頑張って節約してきたあなただからこそ、そのお金をぜひ自分自身の人生を豊かにするためにも使ってあげてください。
介護は頑張るものではなく、続けるもの。
そしてお金を使うことも我慢するためではなく、あなたの人生を豊かにするために上手に付き合っていきましょう。
今回の話に興味が出てきたら
今回取り上げた『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著)は、累計200万部を超えるベストセラー。
お金にまつわる力を「貯める」「稼ぐ」「増やす」「守る」「使う」の5つに分類し、イラスト付きでわかりやすく解説した一冊です。専門用語の多いお金の本にありがちな難しさがなく、初めて家計や資産形成を学ぶ人でもすんなり読み進められます。
介護の仕事は待遇面での悩みを抱えやすい業界でもあります。だからこそ、
- 「貯める力」で日々の家計に余裕を持たせる
- 「増やす力」で将来の備えを少しずつ始める
- 「守る力」で介護離職や収入減のリスクに備える
といった知識は、介護職として働く方にも、ご家族の介護をしながら生活設計を考える方にも役立ちます。
「お金の知識がないから」と後回しにしてきた方も、この一冊から少しずつ「お金との付き合い方」を学び直してみてはいかがでしょうか。
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