これまでのシリーズでは、『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著)の考え方をもとに、
「①家計改善」で固定費の見直しを
「②お金を育てる」で新NISA・iDeCoを
「③自力を鍛える」で処遇改善加算や資格取得を
「④心を満たす」で消費・浪費・投資とお金の使い方を
これまで4回にわたってお伝えしてきました。
節約し、種をまき、収入を伸ばし、心を満たす使い方も覚えた。せっかくここまで積み上げてきたものを最後にしっかりと守り抜く。それが今回、シリーズ最終回のテーマである「守る力」です。
この記事では、『お金の大学』が説く「守る力」の考え方をもとに、介護福祉士として15年以上現場に携わってきた経験を交えながら、介護・福祉職と特に関わりの深い「守る」をお伝えします。
今回の記事を読むことで
- 介護職だからこそ知っておきたい、労災と傷病手当金の仕組み
- なぜ今、投資詐欺は高齢者だけでなく、あらゆる世代を狙っているのか
- 「絶対に儲かる」という言葉の裏に潜む、詐欺の典型的な手口
- 不要な保険から、大切な資産を守るという視点
これらの内容がわかり、これまで積み上げてきたものを、最後まで自分の手で守り抜く力を身につけるきっかけになれば嬉しいです。
※本記事は『改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著/朝日新聞出版)の考え方を参考に、介護・福祉職向けの視点を加えて構成しています。労災認定の可否や制度の適用条件は個別の状況により異なるため、詳細は労働基準監督署や社会保険労務士、勤務先の担当部署にご確認ください。
介護職だからこそ知っておきたい、「もしも」に備える公的制度
「守る力」というと、詐欺への警戒をイメージする方が多いかもしれません。しかしその前に押さえておきたいのが、自分自身の体を壊してしまったときに、経済的に自分を守ってくれる公的制度です。
介護職に多い腰痛は、労災の対象になり得る
介護の仕事は利用者の移乗や体位変換など、身体に大きな負担のかかる業務が数多くあります。実際、介護現場における腰痛はこうした動作の繰り返しによって発生しやすい症状として知られています。
厚生労働省が定める認定基準では、腰痛は「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」の2つに区分されます。たとえば、利用者を車椅子へ移乗させようとした際に急な体重移動を支えようとして腰を痛めてしまった場合などは、突発的な出来事による「災害性の原因による腰痛」として、労災認定の対象になり得ます。
一方で日常的な動作の積み重ねで発症する、いわゆる「ぎっくり腰」はこの基準に当てはまらず、労災とは認められないケースが多い点には注意が必要です。「腰を痛めたのは、いつ、どんな作業をしていたときか」を、日頃から意識して記録しておく習慣が、いざというときの助けになります。
労災として認定されなかった場合でも、加入している健康保険組合の給付制度を活用できる場合があります。慢性的な腰痛に悩まされやすい介護職だからこそ、これらの制度の存在を知っておくことは、経済的な守りの土台になります。

病気やケガで働けなくなったときの、傷病手当金
業務中のケガであれば労災保険が適用されますが、業務以外の病気やケガで働けなくなった場合には、「傷病手当金」という制度があります。
健康保険に加入する会社員であれば、病気やケガで働けない状態が3日間続いた後、4日目からの休業に対して、標準報酬日額のおよそ3分の2にあたる金額が、最長で1年6ヶ月にわたって支給されます。これは非課税所得のため、受け取った金額に税金がかかることもありません。
介護の仕事は体力的にも精神的にも負担の大きい仕事です。もしもの時にこうした制度があることを知っているかどうかで、いざという時の安心感は大きく変わってきます。「まさか自分が」と思わず、制度の存在だけでも、今のうちに頭の片隅に置いておいてください。

詐欺は、もう高齢者だけを狙っていない
ここからは『お金の大学』が説く「守る力」のもう一つの柱、詐欺への警戒についてお伝えします。
「投資詐欺」と聞くと、高齢者が狙われるものというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし近年、その状況は大きく変わってきています。警視庁の統計によると、投資詐欺の相談件数のうち30代以下が占める割合は、2018年の27.0%から、直近の統計では30.9%にまで増加しています。
特に増えているのがSNSをきっかけにした投資詐欺です。
インスタグラムなどのダイレクトメッセージで接触し、LINEなどの閉じたグループに誘導したうえで、特定の銘柄への投資を勧誘するという手口が目立っています。グループ内では複数のアカウントを使って「儲かっている」ように装う、いわゆるサクラが登場し、参加者の警戒心を解いていくケースも報告されています。
介護・福祉職の中には、「投資の話には詳しくないから、知り合いや詳しそうな人の話を信じてしまう」という方も少なくないかもしれません。しかし今の時代、詐欺は年齢や職業を問わず、誰の身にも起こり得るものだという前提を持っておくことが、何よりの防御になります。

「絶対に儲かる」という言葉に潜む、典型的な手口
投資詐欺にはいくつかの典型的なパターンがあります。代表的なものを知っておくだけで、危険を回避できる可能性は大きく高まります。
ポンジスキームという仕組み
ポンジスキームとは、投資詐欺の手口の一つです。
ポンジ・スキームは、投資詐欺を構成する手口のひとつである。新規投資家から集めた出資金を既存の投資家に支払う、もしくは、支払われうる外形を持つ手法を指す。投資詐欺の9割がこの手法で行われる。
一方で、既存の出資金の配当を新規出資金を元に支払う構造を持つポンジスキームが直ちに詐欺罪に該当する行為とはならないことには注意が必要である。
「月利5%」「毎月配当」といった、銀行の金利水準では考えられないような高い利回りを謳う投資話には注意が必要です。
こうした話の多くは、新しい出資者から集めたお金を以前の出資者への配当に回しているだけの、破綻することが前提の仕組みになっていることがあります。最初のうちは約束通りに配当が支払われるため、本当に儲かっていると信じ込んでしまい、さらに家族や友人を勧誘してしまうことで、被害が雪だるま式に広がっていくケースも少なくありません。

見分けるための、3つのチェックポイント
怪しい投資話に出会ったときは、次の3点を確認する習慣をつけてください。
- 「必ず儲かる」「元本保証」といった断定的な言葉が使われていないか
- SNSのダイレクトメッセージやLINEグループへの誘導から話が始まっていないか
- その金融商品を扱う業者が、金融庁のウェブサイトで金融商品取引業として登録されているか
一つでも当てはまる場合はその場で契約や入金をせず、一度立ち止まって、家族や信頼できる第三者に相談することが大切です。

不要な保険から、資産を守るという視点
シリーズ①でお伝えした保険の見直しも、実は「守る力」の一部です。
保険は本来、発生確率は低くても、起きたときの経済的な損失が非常に大きいものに備えるための仕組みです。しかし中には、必要以上に手厚い保障をつけられ、高い保険料を払い続けているケースも見られます。
「なんとなく不安だから」という理由で加入したままの保険がないか、この機会に改めて見直してみることも、大切な資産を守る行動の一つです。

まとめ――積み上げてきたものを、最後まで守り抜く
「貯める力」で足元を整え、「増やす力」で種をまき、「稼ぐ力」で収入を伸ばし、「使う力」で人生を豊かにする。ここまで全4回、様々な角度からお金との向き合い方をお伝えしてきました。
しかし、どれだけ努力を積み重ねても体を壊してしまったり、詐欺に遭ってしまったりすれば、これまでの努力が一瞬で崩れてしまうこともあります。だからこそ、この「守る力」はシリーズの締めくくりにふさわしい最後の砦なのです。
介護職として体を大切に使いながら働き、いざという時に頼れる制度を知っておくこと。そして、甘い言葉に惑わされず、冷静に判断する視点を持っておくこと。これらはどちらも特別な知識がなくても、今日から意識できることです。
介護は頑張るものではなく、続けるもの。そしてお金との付き合い方も焦らず、しかし気を緩めずにこれからも続けていきましょう。
この5回のシリーズが給料面での不遇さに悩んできたあなたにとって、少しでも「知っているから安心できる」という力になれば、これほど嬉しいことはありません。

今回の話に興味が出てきたら
今回取り上げた『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著)は、累計200万部を超えるベストセラー。
お金にまつわる力を「貯める」「稼ぐ」「増やす」「守る」「使う」の5つに分類し、イラスト付きでわかりやすく解説した一冊です。専門用語の多いお金の本にありがちな難しさがなく、初めて家計や資産形成を学ぶ人でもすんなり読み進められます。
介護の仕事は待遇面での悩みを抱えやすい業界でもあります。だからこそ、
- 「貯める力」で日々の家計に余裕を持たせる
- 「増やす力」で将来の備えを少しずつ始める
- 「守る力」で介護離職や収入減のリスクに備える
といった知識は、介護職として働く方にも、ご家族の介護をしながら生活設計を考える方にも役立ちます。
「お金の知識がないから」と後回しにしてきた方も、この一冊から少しずつ「お金との付き合い方」を学び直してみてはいかがでしょうか。
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