介護とAIの話になると、記録の下書きや研修資料の作成を思い浮かべる方も多いでしょう。そこからもう一歩進み、AIが周囲の状況を捉えてロボットや機械を通じて実際に動く技術が注目されています。これが「フィジカルAI」です。
物を運ぶ。
移動を支える。
身体を支える動作を補助する。
こうした技術が育てば、介護職や家族の負担を減らせる可能性があります。一方で、人の身体に触れる介護には物の運搬とは異なる難しさがあります。
介護の現場に約15年携わってきた私は、介護でAIを使う価値は利用者が望む暮らしを支え、介護を担う人も無理なく続けられるようにすることにあると考えています。 この記事では、その視点から技術の進歩を見ていきます。
なお、今回の記事は出版社の紹介、書評、著者の公式サイトで確認できる範囲を入口にしたもので、書籍全体の内容を解説するものではありません。
『フィジカルAIの衝撃』の著者・田中道昭氏
田中道昭氏の著書『フィジカルAIの衝撃 「身体をもった人工知能」は2030年の世界をどう変えるか』は、2026年5月に朝日新聞出版から刊行された書籍。出版社は、物理世界で行動するAIがもたらす変化と日本企業の競争戦略を扱う本として紹介しています。
著者の田中道昭氏は戦略コンサルタントであり、日本工業大学大学院技術経営研究科の教授を務め、株式会社マージングポイントの代表取締役社長でもあります。テレビ東京「WBS」のコメンテーターなど、メディアでも活躍しています。
公式サイトでは、AIがデジタルの中だけで完結する時代から現実の世界に踏み出す転換点に来ていると述べています。そして、日本企業が強みとしてきた「現場」の力を、これからの時代にどう生かすかを明らかにしたいと書いています。
書評では、同書はフィジカルAIを特定の機械の名前としてではなく、物理的な空間そのものが知能を持ち、目的のために全体が連動する仕組みとして捉えていると紹介されています。この捉え方は介護に当てはめると、機器を一台置いて終わりではなく、「気づく、知らせる、対応する、記録する」という流れ全体で考えるということになります。
フィジカルAIとは?「状況を捉えて動く」AI
フィジカルAIでは、カメラなどのセンサーで周囲を捉え、AIが情報を処理し、機械の動作につなげます。これは人型ロボットだけを指す言葉ではなく、自律移動する機械なども含めて考えられます。
例えば施設内で物品を運ぶ場合、行き先を指定するだけでなく、廊下の人や障害物を捉えて移動経路を調整するといった使い方が考えられます。
その進歩を支える技術の一つが、VLA(Vision-Language-Action)モデルです。画像、言葉による指示、ロボットの動作を結びつけます。OpenVLAの研究では、多数のロボットの実演データを使った学習や、新しい作業・環境に合わせた追加学習が報告されています。
Vision-Language-Action Models(VLA)は、視覚、言語、そして行動の3つのモダリティからの情報を統合的に処理するマルチモーダルモデルです。
これは、テキストベースの対話を行うChatGPTのような会話型AIとは異なり、環境とインタラクションする物理的な実体(ロボットなど)を制御することを目的としています。
特に、言語による指示に基づいてロボットがタスクを実行する「言語条件付きロボットタスク」において、VLAは言語の理解、環境の視覚的認識、そして適切な行動の生成という不可欠な能力を発揮します。
ここで注意したいのは、「指示を理解できること」と「どんな状況でも適切に動けること」の違いです。物をつかむ研究成果から、着替えや食事介助まで安全に任せられると判断することはできません。
介護で使うには、対象者や環境に応じた検証が必要です。

フィジカルAIのシステム構造と層状アーキテクチャ
フィジカルAIは現実世界の情報を捉え、AIが認識・判断し、その結果を機械の動作や現場の制御につなげるシステムです。ひとことで言えば、「捉える、判断する、動く、確かめる」までを一続きで扱う技術といえます。
この全体像は二つの視点で整理すると分かりやすくなります。一つは開発から運用までの流れ、もう一つは産業を支える技術や企業の役割です。
(1)開発から運用までを捉える、概念的な4層モデル
① 世界基盤モデル:環境の変化を予測・生成する
世界基盤モデル(World Foundation Model)は、多様なデータから物体の動きや環境の変化を学び、将来の状態などを予測・生成する汎用的なモデルです。
例えばNVIDIAのCosmosでは、大規模な映像データで事前学習したモデルを土台にして、ロボットや自動運転などの用途に合わせて追加学習する進め方が示されています。2026年6月には、視覚の理解、世界の生成、行動の予測を一つのシステムにまとめた「Cosmos 3」も発表されました。ただし、その性能はNVIDIA自身の発表に基づくものです。
② デジタルツインとシミュレーション:現場の変更を事前に検討する
デジタルツイン(Digital Twin)は、現実の設備や工程などをデジタル上に表現し、現実から得たデータと対応づけて、状態を把握・更新する仕組みです。現実に似た3D空間をつくるだけのものとは区別されます。
デジタルツインとシミュレーションを組み合わせると、設備の配置や動作、運用方法の変更を実際の現場に適用する前に検討できます。実機で試す回数や、機器の破損・稼働停止に伴う費用を減らす効果が期待されています。
③ 産業OS・統合運用基盤:AIを現場の仕事につなぐ
ここでいう「産業OS」はAI、設備、業務システム、データ、運用ルールなどを結びつける基盤を指す広い概念です。パソコンのOSと同じ範囲を指すとは限らず、企業や資料によって使われ方も異なります。
NVIDIAとSiemensは設計、シミュレーション、製造、運用などをつなぐ構想に「Industrial AI Operating System」という名前を使っています。2026年1月のCESで、両社が提携の拡大とともに発表しました。Siemensの技術ブログも同様の構想について、文字どおりのOSではなくソフトウェアやインフラ、運用の連携を束ねる層だと説明しています。
この領域には作業の割り当て、工程の連携、データの統合、操作権限、異常時の対応などが関わります。ただし、安全に停止する機能や機器の制御まで一つの産業OSがすべて担うとは限りません。
④ 現場運用:実行し、結果を確かめる
現場ではセンサー、AIによる認識や動作計画、制御装置、ロボットなどが連携し、物理的な作業やサービスを実行します。運用には機器の監視、保守、人による介入、異常時の停止なども含まれます。取得したデータはモデルや運用方法を改善するための材料になります。
ただし、データを集めることと、稼働中のAIが自動的に学習して動作を変えることは別です。安全性が重要な現場では、変更の内容を検証し、適用してよいかを判断する手順が欠かせません。

(2)産業分析のための「三層構造」モデル:大地・OS・身体
産業を構成する役割は「大地・OS・身体」という比喩でも整理できます。下の表では、それぞれの層で確かめたいことを問いの形で示しました。
| 層 | 主な役割・要素 | 確認する問い |
|---|---|---|
| 大地:計算・インフラ基盤 | 半導体、計算設備、通信、電源、冷却など | 学習と運用を支え続けられるか |
| OS:知能・制御・業務連携 | AIモデル、認識・計画、制御ソフト、データ統合、業務システムとの接続など | 現場の仕事として機能するか |
| 身体:物理装置・人との接点 | センサー、モーター、減速機、ロボット機構、操作・接触部分など | 必要な動作を安全かつ確実に行えるか |
この表の「OS」は産業OSだけでなく、知能や制御を含むソフトウェア側の役割を広くまとめた呼び方です。
この三層は、上から下へ命令を渡すだけの関係ではありません。身体が捉えた現場の情報が知能・制御側に戻り、その結果が次の動作や改善に使われます。また、計算機をロボット本体に搭載する場合のように、層の境界が重なることもあります。
日本企業の競争力を考えるときにも、どの層に属するかだけでなく、他の技術と接続できるか、導入後の保守や改善まで支えられるかを見ることが大切です。

(3)「現場を触らずに現場を変える」という言葉の意味
「現場を触らずに現場を変える」という言い方は、現場を変更する前に仮想空間で改善案を試せるようになる変化を強調したものといえます。
例えば、設備を実際に動かす前に配置を比べる。運用を変える前に作業手順を検討する。こうした進め方は意思決定や改善のスピードを変える可能性があります。
ただし、現場の観察、データの収集、実機での検証、設備や運用の調整まで不要になるわけではありません。デジタルツインの結果を意思決定に使うには、そのモデルが目的に対して十分に信頼できるかを確かめる必要があります。
この言葉はフィジカルAIの「真の定義」というより、「仮想空間で先に検討し、その結果を現場に反映する変革の一側面」として受け止めるのが正確でしょう。

(4)「動きを生成するAI」という説明の範囲
フィジカルAIを「動きを生成するAI」と説明すると、文章や画像を生成するAIとの違いを直感的に伝えられます。より正確には周囲の状況を認識し、行動を選んで計画し、物理的な制御や動作につなげるAIです。動作の生成はその働きの一部にあたります。
また、生成AIとフィジカルAIはどちらか一方に分類するものではありません。生成AIの技術を環境の予測やロボットの動作計画に使うこともあります。
(5)現実世界で動くための安全性と責任分担
フィジカルAIでは重さ、摩擦、接触、時間の遅れ、故障などの条件が実際の動作に影響します。人の近くで動く場合にはその誤りがケガにつながる可能性もあります。そのため性能だけでなく、使用できる条件、危険の検知、停止の方法、人が介入する手順、保守、記録まで含めて設計する必要があります。
「責任を伴うAI」と言うとき、それはAI自身が責任を引き受けるという意味ではありません。開発・導入・運用に関わる人や組織の役割と、判断の手順を明確にすることを指します。
そしてこうした責任は、従来のロボットや生成AIにも必要です。フィジカルAIでは学習したモデルの判断が物理的な動作に直結します。そのため、判断から動作までのつながり全体の安全性を確かめることがいっそう重要になります。

(6)介護の現場に置き換えて考える
ここまでの整理は製造業を中心にした見方です。介護の現場に当てはめると次のような問いになります。なお、これはあくまで考え方の例であり、すでに使える技術があるという意味ではありません。
| 層 | 介護で考えたいこと(例) |
|---|---|
| 世界基盤モデル | 予測に誤りが残ることを前提に、本人の状態の判断を機械任せにしない |
| デジタルツイン・シミュレーション | 居室や廊下のレイアウト、動線の変更を、実際に動かす前に検討できるか |
| 産業OS・統合運用基盤 | 通知を誰が受けるか、記録や他のシステムとどうつなぐか、複数の通知が重なったときにどう動くか |
| 現場運用 | 職員が介入できるか、止められるか、故障時に代わりの支援方法があるか |
| 身体(機器・接触部分) | 本人に触れる動作が、痛みや不安を与えずに、安全に行えるか |
機器の性能が上がっても、本人が納得して支援を受けられるか、介護を担う人が無理なく続けられるかという二つの視点は欠かせません。仕組みを知ることは機器を選ぶときや、導入の説明を聞くときに、確かめるべき点を見つけやすくしてくれます。

【考察】介護の人手不足に、AIは何を担えるのか
ここからは、本書を読んだ私の考察となります。
厚生労働省が2024年に公表した第9期介護保険事業計画に基づく推計では、2040年度に必要な介護職員は約272万人です。2022年度の約215万人と比べ、約57万人多くの職員が必要になる計算です。

介護の担い手を確保するには処遇改善、育成、離職防止などを合わせて進める必要があります。AIやロボットも、その取り組みを支える選択肢の一つです。技術が進歩することを理由に働く環境の改善を後回しにしてよいわけではありません。
私は、導入を考える際には「介護職の仕事」を一括りにせず、作業ごとに分けて考えることが大切だと思います。
| 業務 | 技術に期待できる支援の例 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 記録・情報共有 | 音声入力、文章の整理、申し送りの下書き | 観察事実との一致、確認・修正の負担、個人情報 |
| 物品運搬・清掃 | 搬送や清掃の一部を機械に任せる | 人との接触、通路、衛生管理、停止時の対応 |
| 見守り | 動きや状態の変化を検知して知らせる | 誤報・見逃し、通知後に対応する人 |
| 移乗・移動 | 身体的負担の軽減、本人の動作の補助 | 身体状態、痛み、使用条件、操作する職員の習熟 |
| 対話・生活支援 | 会話や活動のきっかけ、情報提供 | 本人の希望、使いたくない意思、必要な人の支援につながること |
この表は支援の可能性と確認点を整理したもので、製品ごとの機能や実用段階には差があります。また記録作成は主にソフトウェアのAI活用であり、見守り機器や移乗支援機器も、すべてがフィジカルAIに当たるわけではありません。

すでにある介護テクノロジーと、これからのAIを分けて見る
厚生労働省と経済産業省は2024年6月に重点分野を改訂し、名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」に変更しました。機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援を追加し、9分野16項目へ拡充しています。
これは、介護を技術で支える取り組みが人型AIロボットの登場を待って始まるものではないことを意味します。移乗支援や見守りなど、すでにある技術をどう活用するかも大切です。
将来の高性能な機械に期待しつつ、いまの現場に合った道具を選ぶ。その積み重ねが必要だと言えます。今AIを使っていなくても、本人の動きを助け、職員の負担を減らせるなら十分に価値があります。

AXとは、機器の導入と一緒に仕事の進め方も変えること
最近よく耳にする「AX」は、AIトランスフォーメーションの略です。2026年7月14日に閣議決定された人工知能基本計画では、AIを前提に意思決定や業務の進め方を根本から見直す方向性が示されています。
(社会全体での日本AXに向けて ~「信頼できるAI」で日本を駆動~)
我が国は、引き続き、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指し、安全・安心を確保しながら、先端AI技術の社会全体での実装を追求する。人手不足を始め、深刻な課題を抱えているからこそ、我が国は、エージェント型AIの社会実装を起点として、社会全体でのAX推進による大きな課題解決効果が期待できる。
そのため、個人の尊厳が尊重される人間中心のAI社会を堅持しつつ、制度や政策についてAIを前提として再構築することを始めAIの実装能力を抜本的に強化し、エージェント型AIについても日本の「信頼性」を再現する。
あわせて、我が国は、「人とAIが協働する社会」の実現に向け、エージェント型AIの登場で高まるリスク、特に働き方や雇用への影響、格差拡大への懸念にも向き合う。人と社会との関係を再定義し、人とAIがどういった役割分担の下、信頼を構築するのか、判断責任を始め人が創造すべき価値は何かを探究するとともに、人が人として判断し、行動し、生きるため、社会の枠組みの構築や、創造力、思考力、判断力、適応力、コミュニケーション力などを含む「人間力」の増進に率先して取り組んでいく。
介護で考えるなら、例えば見守り機器を置いたあと、誰が通知を受けるか、複数の通知が重なったときにどう動くか、状態の変化をどう記録・共有するかまで組み立てることです。
通知が増えても対応する人が決まっていなければ、職員はかえって振り回されます。電子記録と紙の記録を両方残せば、入力の手間が増えることも考えられます。機器を置いた先の仕事まで見直して、初めて負担軽減につながります。
政策面でも、2026年8月5日に第1回「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」が開かれています。ただし「政策として推進されていること」と「個々の製品の効果や安全性が確認されていること」は分けて捉える必要があります。

人の身体に触れる介護では、「できた」の意味が重い
物品を棚へ運ぶ作業とベッドから車いすへの移乗では、失敗したときに起こることが違います。
介護では身体の状態に加えて、そのときの痛みや疲れ、不安にも目を向ける必要があります。同じ方でも昨日できた動きが今日は難しいかもしれません。途中で「やめて」と言われたら、動作を中断しなければなりません。
これは介護への応用を考えるうえでの重要な評価点です。機械が予定した動作を終えることだけでなく、本人が安全に、納得して支援を受けられるかを確認する必要があります。
なお、文章を作る生成AIにも重大なリスクがあります。誤った申し送りや事実と異なる記録がその後のケアに影響する可能性があるからです。「画面の中の間違いなら書き直せば済む」と軽く考えることはできません。
フィジカルAIでは、そこに接触や転倒などの物理的な危険も加わります。導入にあたっては使用できる条件、停止方法、異常時に介入する人、故障時の代替手段まで事前に決めておくことが欠かせません。

見守ることと、本人の暮らしを管理すること
見守りの通知は本人に何が起きているかを確かめるきっかけになります。ただ、ベッドから起きたという情報だけではトイレへ行きたいのか、眠れないのか、何かを探しているのかまでは分かりません。
起き上がるたびに制止すれば、安全を優先したつもりでも本人の望む行動を妨げるかもしれません。通知を受けて何をするかには介護の判断が残ります。
カメラや音声を扱う場合には、プライバシーも考える必要があります。特に居室や排泄に関わる情報は、本人にとって見られたくないものかもしれません。収集する範囲、利用目的、保存期間、閲覧できる人を整理し、本人に分かる方法で説明することが大切です。
生成AIサービスについても、個人情報保護委員会は入力情報が学習に使われる場合の取り扱いや、利用目的に必要な範囲での利用に注意を促しています。現場の情報を扱うなら、組織が認めたサービスとルールのもとで使う必要があります。
家族として施設の機器導入について聞く場合は「何ができる機械か」に加えて、
- 通知があったとき、誰が対応するか
- 本人が嫌がったときは、どう対応するか
- 機器が止まったり故障したりしたときは、どう支援するか
このように尋ねると、実際の支援が見えやすくなります。
負担が減ったかを、導入後の仕事まで含めて確かめる
例えば搬送ロボットを導入するなら、運搬時間の短縮だけを測って終えるのは早いでしょう。積み込み、清掃、充電、立ち往生への対応、保守の連絡にも時間がかかります。
購入費に加えて、通信、保守、研修、設備変更などを含む費用も見ておく必要があります。ロボット本体の価格が下がっても、その現場で使い続ける総額まで安くなるとは限りません。
導入前後では、次のような点を一緒に見ると、効果を判断しやすくなります。
- 操作や確認、トラブル対応まで含めた作業時間
- 職員の身体的・心理的な負担と、その偏り
- 事故やヒヤリ・ハット、誤報・見逃し
- 本人の安心感、できること、選べること
- 継続して使うための費用と支援体制
こうした点を決めるときには実際に機器を使う職員や、本人・家族の声を導入前から聞いておくことも欠かせません。機器を選ぶ人と使う人が違うと、「あると便利」と「現場で使える」の間にずれが生まれやすいからです。
厚生労働省は介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と捉えています。業務改善で生まれた余裕を、利用者と向き合う時間や人材育成につなげる考え方です。
その余裕を職員が休憩を取り、無理なく働ける環境にもつなげたいものです。負担軽減の成果が新しい業務で埋まってしまえば、介護を続けやすくするという目的は達成できません。
【まとめ】AIと一緒に、どんな介護をつくりたいか
フィジカルAIの発展は介護の身体的な負担を軽くし、利用者自身ができることを増やす可能性を持っています。「必要な物を自分で取り寄せられる」「移動を補助してもらえる」。そんな使い方が実現すれば、「人に頼まなければできなかったこと」の選択肢も広がるでしょう。
一方で、介護全体をいつAIに任せられるかという問いには簡単な答えがありません。作業ごとの安全性や本人の希望、支援体制を確かめる必要があります。
私が介護の立場から大切にしたいのは、技術によって生まれた余裕を本人の声を聞き、状態を確かめ、支援を考え直す時間に使うことです。また同時に、家族や職員が疲れ切る前に休めることも成果として大切にしたいと思います。
新しい機械が来たときにはその先にある暮らしを見てみる。
本人の選択肢は増えたか。
介護を担う人は楽になったか。
その二つを確かめながら、AIと介護の関係を育てていくことがこれからの介護・福祉にとって欠かせない姿勢なのだと思います。
関連記事
【介護×AIに関する記事】
・【本のおすすめ】フィジカルAIで介護はどう変わる?『フィジカルAIの衝撃』に見る、人と技術の役割
・親の介護でChatGPTを使う10の方法|介護歴15年の介護福祉士が厳選
・「記録に追われて利用者と話せない」を変える、介護現場のAI活用とは
・離れて暮らす親が心配……その不安、AIやIoTが少し軽くしてくれるかもしれません
・「AIは介護職から仕事を奪うのか」は、心・自我・AIを知ればわかる
・今からでも間に合う、これからの介護・福祉に必要なAIを学ぶ
【介護に関する記事】
・『ヒト』を大切にする介護実践は「分析→検証→実践」にある
・「介護ってなんだろう?」と悩んだら読み返す。何度でも。
・介護をしてきた方との別れを、どう受け止めたらいい?
・【書籍紹介】自著『お互いにありのままでいられる「想い紡ぐ介護」への招待』を解説




コメント