「記録に追われて利用者と話せない」を変える、介護現場のAI活用とは

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介護×AI
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今日も、利用者さんと話す時間よりパソコンに向かう時間の方が長かった」––そんな一日を何度繰り返してきたでしょうか。

介護の仕事は本来「人と向き合う仕事」のはずです。しかし現場に立てば立つほど、記録・報告書・会議の議事録といった事務作業に追われ、気づけば一日の大半をパソコンやノートに向かって過ごしている。そんな現実にもどかしさを感じてきた介護職の方は少なくないはずです。


この記事では、介護福祉士として15年以上現場に携わってきた経験と、今まさに現場で広がりつつあるAI活用の実態をもとに、「記録業務のAI化は、本当に現場を楽にするのか」「導入する側が抱える不安とどう向き合えばいいのか」について、率直にお伝えします。

今回の記事を読むことで


  • なぜ今、介護記録の現場にAI活用が急速に広がっているのか
  • 音声入力AIで、実際に何がどう変わるのか
  • 記録だけじゃない、ケアプラン作成や見守りAIとの連携
  • 導入コストと、活用できる補助金制度
  • 「AIに仕事を奪われるのでは」という不安との向き合い方
  • AIを過信しないために、現場が意識しておきたいこと



これらの内容がわかり、AIという新しい存在を、身構えすぎず、かといって過信もせず、現場の一つの味方として捉えるきっかけになれば嬉しいです。


※本記事で紹介したサービス・数値は2026年時点の各種報道・公開情報をもとにしています。導入を検討される際は、各サービス提供元の最新情報をご確認ください。


なぜ今、介護記録の現場にAIが広がっているのか

介護業界の人手不足は、年々深刻さを増しています。厚生労働省の推計では2040年度には約57万人の介護人材が不足すると見込まれており、政府もテクノロジー導入の支援に大規模な予算を投じ、AI・ICTの普及を後押ししています。


現場を長年見てきた立場から言えるのは、介護現場で最も職員の時間を奪っているのは、実は「利用者と接する時間」ではなく「記録・報告書などの事務作業」という現実です。行政への提出書類や加算取得のための記録は年々増え続け、手書きのメモを勤務終了後にパソコンで打ち直すという二度手間も、多くの施設で当たり前のように残っています。

また現場では「今日利用者さんとどういう関わりをしたか」を思い出せず、毎日就業時間を超えて介護記録を書く職員の姿がありました。そこで介護記録の取り方について勉強会をしましたが、「文章を書く」ことへの苦手意識も相まって、介護記録のために介護職員の時間や労力が失われていく状況をなかなか改善できずにいました。


こうした背景から今、音声入力を中心としたAI記録システムの導入が急速に広がりつつあります。


DXHR株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:前田一成)は、看護師・介護士・施設管理者を対象とした業界特化型の生成AI活用研修「看護・介護職 生成AI活用eラーニング」の提供を開始いたしました。

本研修は、看護・介護現場で最大の時間負担となっている記録業務をはじめ、申し送り、観察・アセスメント、ケアプラン作成、患者・家族対応、安全管理、事務業務、シフト作成、教育・人材育成まで、現場業務の全領域にわたる生成AI活用を体系的に学ぶ全12章・12時間のeラーニングプログラムです。最大の特徴は「スマホの音声入力×AI」を軸としたワークフロー設計で、PCが苦手なスタッフでも声で話すだけで記録や報告書が完成する仕組みを習得できます

「声で記録、AIが整える」看護・介護現場の全業務にAIを実装する、業界特化型eラーニングを提供開始|PRTIMES

 ■ 背景・目的 

看護・介護の現場では、慢性的な人手不足の中、記録業務に多大な時間が費やされています。看護記録1件あたり約15分、夜勤明けの申し送り準備に30分以上かかるケースも珍しくなく、記録のために残業せざるを得ないスタッフが後を絶ちません。本来、患者や利用者と向き合う時間に充てるべき時間が、書類作成に奪われている現状があります。

一方、生成AIの活用は多くの業界で進んでいますが、医療・介護現場では「PCに不慣れなスタッフが多い」「専門用語や独自のフォーマットに対応できるのか」「そもそも手が離せない現場でどう使うのか」といった固有の障壁があり、導入が進みにくい状況です。

こうした背景から、DXHRでは看護・介護業務を69項目に分解し、各タスクのAI活用最適解を体系化。さらに、「スマホの音声入力でAIに指示を出す」というワークフローを全カリキュラムの基本軸に据えることで、PCスキルに依存しない、現場で本当に使えるAI活用研修を実現しました。

ベッドサイドで、移動中の車内で、ケアの直後に——声で話すだけで記録が完成する新しい働き方を、看護・介護の現場に届けます

「声で記録、AIが整える」看護・介護現場の全業務にAIを実装する、業界特化型eラーニングを提供開始|PRTIMES




加えて厚生労働省は「介護テクノロジー導入支援事業」として約97億円規模の予算を確保しており、音声記録AIや見守りセンサーといった機器が補助対象に含まれています。

自治体によっては補助率が最大4分の3に達する制度もあり、導入コストの負担が以前よりも大きく下がってきているのも、普及を後押しする要因の一つです。

介護テクノロジー導入支援事業は、介護ロボットやICT機器(介護ソフト、見守りセンサー、インカム等)の導入費用を国(厚生労働省)の基金などから補助し、介護現場の業務効率化や職員の負担軽減を目指す都道府県主体の補助金事業。


音声入力AIで、実際に何がどう変わるのか

音声入力AIとは、ユーザーが声で発した言葉をAIが認識・解析し、テキストへの変換やAIへの命令(プロンプト)として処理する技術です。

キーボード操作不要で大量の情報を素早く入力できるため、業務効率化や時短ツールとして注目されています

【主な特徴とメリット】

  • 圧倒的なスピード: 一般的に話す速度はタイピングの約3倍以上とされており、長文を素早く入力できます。
  • 「ながら」作業の実現: 資料を見ながらハンズフリーでAIに指示を出せるため、思考を遮らずに作業に集中できます。
  • 文脈の理解力: 音声特有の「言い淀み(えー、あの)」や多少の誤変換をAIが自動で判断・修正し、正しい文章に整えてくれます。

話すだけで記録が「完成」する

従来の音声入力といえば、話した内容がそのまま文字になるだけのものでした。しかし近年のAIはそれだけにとどまりません


たとえば職員が「Aさん、今日ちょっと熱があって不機嫌だったんだよね」と、普段の会話のような口調で話しかけると、AIがその内容を汲み取り、「A様は本日発熱が見られ、精神的に不安定なご様子でした」という専門職としての適切な記録文に自動で変換してくれます

文脈を理解する力も進化しており、「ハシ」という発音一つとっても、食事の場面であれば「箸」、移動の場面であれば「端」というように、前後の会話から自動で判別できるレベルに達しています。さらに「褥瘡」「嚥下」といった専門用語への対応力も高まってきています。

導入した現場では、どれくらい変わっているのか

実際に導入が進んでいる音声AI記録サービスでは、月100時間を超える記録業務の削減や、人件費換算で年間180万円規模のコスト削減につながった事例が報告されています。記録にかかる時間が1日1時間以上短縮された事業所も出ており、その浮いた時間を利用者との会話やケアに充てられるようになったという声も増えています。

「記録のために話しかける」のではなく、「ケアをしながら自然に話したことが、そのまま記録になる」。この発想の転換こそが、今のAI記録技術の本質だと感じています。


記録だけではない――ケアプラン作成や見守りセンサーとの連携も進む

現場のAI活用は、記録業務の効率化だけにとどまりません。ここ最近特に注目されているのが「ケアプラン作成支援」と「見守りAIとの連携」です。

ケアプラン作成支援AI

ケアプランの作成はケアマネジャーにとって専門性と時間の両方を要する、負担の大きい業務です。ここに生成AIを活用し、利用者の過去の記録やアセスメント結果をもとにケアプランの素案を自動生成してくれるサービスが登場しています。


例えば、

・自然言語処理技術を活用してケアマネジャーのケアプラン(居宅サービス計画書)作成を支援するクラウドAIサービス「ミルモプラン
・ADLや認知症状などの将来状態を予測し、自立支援に向けたサービスプランのパターンを提案するAIシステム「SOIN(そわん)

などがケアプラン作成支援AIとして挙げられます。


ケアマネジャーは「AIが作成した素案を確認し、専門的な視点から修正を加えて完成させる」という流れになるため、ゼロから作成する場合と比べて作業時間を大幅に短縮できます。

ただし、最終的な判断と責任はあくまでケアマネジャー自身が担うものであることは変わりませんAIはあくまで「叩き台」を作ってくれる存在であり、利用者一人ひとりの個別性を踏まえた最終判断は、専門職にしかできない仕事です

見守りセンサーとの組み合わせ

ベッド下のマットやトイレのドアセンサー、部屋内の人感センサーなど、複数の小型センサーを組み合わせることで、「いつもより夜間のトイレ回数が多い」「朝の起床が遅い」といった、日常のリズムの変化から体調の異変を察知する仕組みも普及が進んでいます。

こうした見守りデータと日々の記録AIが連携することで、職員の勘や経験だけに頼らない、データに基づいたケアの判断材料が増えていきます。特に経験の浅い職員にとっては、ベテラン職員が長年の経験で培ってきた「なんとなくの違和感に気づく力」を、データの面から補ってくれる心強い存在になり得ます。


導入コストと、活用できる補助金制度

「便利そうだけど、費用が心配」という声は、現場から最もよく聞かれる本音の一つです。

見守りセンサーは機器一つあたり数万円から30万円程度、介護記録AIは月額数千円から数万円程度が一般的な目安とされています。決して安い投資ではありませんが、前述の「介護テクノロジー導入支援事業」をはじめとした補助金を活用すれば、実質的な自己負担を大きく抑えられるケースもあります


介護テクノロジー等を受けるにあたって受けられる補助金制度は、おおまかに以下の通りです。





補助金の対象は音声記録AIや見守りシステムだけでなく、ケアプラン作成支援AIやAIによるシフト管理まで、幅広い分野に及んでいます。申請窓口はそれぞれの制度によって異なるため、申請先や公募時期、上限額を事前に確認しましょう

「うちの規模では無理だろう」と諦める前に、まずは自施設が所在する都道府県の窓口に問い合わせてみることをお勧めしたいところです。



「AIに仕事を奪われるのでは」という不安

新しい技術が現場に入ってくるとき、必ずと言っていいほど生まれるのが「AIに仕事を奪われるのでは」という不安です。

「自分の仕事がなくなってしまうのではないか」「複雑な操作を覚えられるだろうか」。特に介護現場はベテラン職員が多く、スマートフォンやタブレットの操作そのものに苦手意識を持つ方も少なくありません


しかし、ここで押さえておきたいのは、現状AIが担っているのは「記録という作業」であって「介護というケアそのもの」ではないということです。

利用者の表情を読み取ること、声のトーンから体調の変化に気づくこと、不安を抱えるご本人にそっと寄り添うこと。こうした人にしかできない部分は、これからも変わらず現場の職員が担っていく領域です。実際に平均年齢63歳という職員構成の施設でロボットやAI技術の活用に成功した事例もあります。


現場でのAI導入は、技術面よりも「現場が受け入れられるかどうか」の方が、はるかに大きなハードルになると言われています。具体的には、次のような壁が挙げられます。

  • 職員のITリテラシーの差(ベテランほどスマホ操作に不安を感じやすい)
  • 利用者やご家族の受容(カメラやセンサーへの心理的な抵抗感)
  • 使い慣れた紙の記録から、新しいシステムへの移行の難しさ
  • 介護報酬の枠内で投資判断をしなければならない予算の制約
  • 要配慮個人情報を扱うことへの、個人情報保護の観点からの慎重さ


これらは「技術さえ優れていれば自然に解決する」という性質のものではありません。現場との丁寧な対話を重ね、無理のないペースで段階的に導入を進めていく設計こそが成功の分かれ目になります


AIを過信しないために、現場が意識しておきたいこと

AIが導き出す判断や予測はあくまで過去のデータに基づいた「傾向」に過ぎません。現段階では目の前の利用者が今この瞬間に見せている微妙な表情の変化や、言葉にならない違和感までは読み取れないのです。

加えて音声認識の誤変換や見守りセンサーの誤検知も起こり得るため、AIが出した記録や通知はそのまま鵜呑みにせず、必ず職員自身の目と判断で確認する習慣が欠かせません。技術に助けてもらいながらも、最終的にケアの質を守るのは人であるという意識を、現場全体で共有しておくことが大切です。


精度は完璧ではないと知っておく

どれほど技術が進歩しても音声認識の精度が100%になることはありません。周囲の騒音が大きい環境や、早口で話した場合、あるいは「たいせい」(体制・体勢・耐性など)のような同音異義語では、誤認識が起こりやすくなります。

だからこそ、音声入力で作成された記録は必ず自分の目で確認してから確定させるという運用を徹底することが欠かせません。AIはあくまで記録の下書きを作ってくれるアシスタントであり、最終的な内容への責任はこれまでと変わらず人間が持つべきものです

誤変換は「笑い飛ばす」くらいの余裕を

現場でAI音声入力を運用していると思わぬ誤変換に出会うことがあります。そんなとき、「使えないAIだ」と切り捨ててしまうのではなく、「この言葉をまだ覚えていなかったんだな、教えてあげよう」という感覚で辞書登録をしていくことがAIとの上手な付き合い方です。

月に一度、「今月の珍誤変換」を職員同士で笑い合うような時間を作れている組織ほど新しい技術の定着がうまくいくと言われています。「完璧を求めすぎず育てていく」という姿勢が、現場とAIの関係を長く続けるコツなのかもしれません。

個人情報の扱いには、細心の注意を

介護記録には利用者の氏名や病歴、身体状況といった、極めて機微な個人情報が含まれます

ここで現場として絶対に避けなければならないのが、一般に公開されている生成AIサービスに利用者の氏名や病歴などをそのまま入力してしまうことです。個人情報保護法違反に直結しかねないリスクがあるため、施設として導入するシステムが適切なセキュリティ基準を満たしたものであるかを確認することが欠かせません。

厚生労働省が定める医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに沿ったクラウドサービスを選ぶこと、そして「どのデータを、誰が、どこまで閲覧できるのか」を施設内であらかじめ明文化しておくことも、トラブルを防ぐうえで重要なポイントです。



現場から伝えたいこと ――AIは「代わり」ではなく「時間を取り戻す道具」

15年間、介護の現場に立ち続けてきた中で強く感じるのは、この仕事を選んだ人の多くが、「利用者ともっと向き合いたい」という想いを抱えているということです。その想いがありながら、記録や書類に追われて目の前の人と話す時間が削られていく。そんなジレンマを数えきれないほど見てきました。


AIはその職員の代わりに利用者と向き合ってくれるわけではありません。しかしAIが記録という作業を引き受けてくれることで、職員がもう一度利用者と向き合うための時間を取り戻すことができる。それこそが介護現場におけるAI活用の、本当の価値だと思っています。


改めて整理しておきたいのは「今のAIにはできないこと」です。


ケアプランの完全自動生成はできず、最終判断と法的責任はケアマネジャーが担います。利用者との信頼関係の構築や精神的な寄り添いを代替することもできません。見守りAIがどれほど進化しても、事故を完全にゼロにすることを保証するものでもありません。

AIの導入とは、こうした「人にしかできないケア」に職員が集中できるようにするための手段です。この認識を現場全体で共有できているかどうかが、導入がうまくいくかどうかの分かれ目になると、私は感じています。


技術は完璧ではありません。だからこそ、人がうまく使いこなしていく余地がまだたくさん残されています。そして人がAIをうまく使いこなすためには知識が欠かせず、介護・福祉職員のテクノロジー・AIリテラシーの向上は急務だと考えます。



まとめ――「記録のための介護」から、「向き合うための介護」へ

「介護はAIに奪われない仕事だ」と、介護・福祉職の方々が祈るように現場やネット上で呟く姿が見受けられます。AIという言葉を聞くと身構えてしまう方もいるでしょう。「機械に仕事を奪われるのでは」という不安が決して的外れなものでないことは、前回の記事「AIは介護職から仕事を奪うのか」は、心・自我・AIを知ればわかる」でもお話しした通りです。


しかし現場で実際に起きていることは「AIが介護を代わりに行う」ことではなく、「AIが事務作業を引き受け、職員が本来のケアに集中できる時間を取り戻す」ことです。記録のために利用者との時間を削るのではなく、利用者と向き合った時間が、自然と記録になっていく。そんな働き方が、少しずつ現実のものになりつつあります。

新しい技術に戸惑うのは当然のことです。それでも一つずつ試しながら、自分たちの現場に合った付き合い方を見つけていく。そのプロセスこそがこれからの介護現場に必要な姿勢なのだと思います。


介護は頑張るものではなく、続けるもの。
そして続けるためには、目の前の「わからない不安」を退けるために必要な知識を身につけることが重要です。


おすすめの書籍

介護現場にテクノロジーを導入するにあたってお勧めする書籍は「今すぐできる!仕事が変わる!!ICT導入から始める介護施設のDX入門ガイド ―準備から運用まで徹底解説―」です。

「なにから手を付ければいいかわからない」という介護事業者の悩みに応えるガイドブックで、ICT・DXの基礎から、実際にDX化した12の事業所の導入事例までを紹介しています。

著者の竹下康平氏は、規制改革推進会議など行政の場でも介護DXについて発信している専門家です。より実務寄りで経営者・管理者層の読者にも刺さりやすい内容となっています。

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